このほか、バイデン政権4年間の具体的「成果」として、①1兆ドル相当の「インフラ活性化法」を成立させ、老朽化した道路、水路、橋、鉄道の再建、農村地域への高速インターネット・システム導入に取り組んだ②400億ドルを投じ、数百万の失職者を対象とした就業指導・育成を図った③低・中間所得家庭のための医療保険料の軽減・免除措置を打ち出した④若年層による銃器殺傷事件の増加に対処するため、18~21歳の男女を対象として銃砲購入の際の身元調査を制度化したなどが挙げられている。
いずれにしても、第二次世界大戦以後を総括しても、GDP、失業率、雇用、株価などの面で民主党政権が共和党政権より大きな成果を挙げてきたことは歴然というのが、米国の多くの経済学者の一致した見解となっている。
続く「経済は共和党」というイメージ
ところが、奇妙なことに、経済問題に関する両党支持率を比較すると、これまでは共和党がかなりの差でリードしてきた。例えば、バイデン政権下の22年11月、中間選挙直前に「ABC NEWS」が「IPSOS」と共同で実施した調査によると、「気候変動」「新型コロナ対策」「銃砲規制」などの社会問題については、民主党が優勢だったが、ガソリン価格などの「経済問題」については、共和党支持率が36%に達したのに対し、民主党はわずか12%にとどまった。
1年後の同調査でも、民主党支持は21%と改善したものの、共和党支持35%には遠く及ばなかった。この間、農業部門を除く全米雇用総数は、実質減少したトランプ政権時と比べ、2.68%増を記録している。
このように、前世紀同様、今世紀に入ってからも、実際は共和党政権下で経済は低迷し、民主党政権下で回復するパターンが続いてきたにもかかわらず、実体とは遊離した「経済は共和党」の“神話”が、これまで有権者の間で定着してきたのはなぜなのか。
この点に関しては、共和党による伝統的に定着したイメージづくりや、巧みなプロパガンダが効を奏してきた、と指摘する専門家が多い。
すなわち、「自由貿易推進の共和党 VS保護貿易主義の民主党」「企業減税の共和党 VS労働組合保護の民主党」「スモールガバメントの共和党 VS ビッグガバメントの民主党」「アメリカン・ドリームを実現させる共和党 VS 規制強化の民主党」など、一般有権者から見て明らかに共和党が好感され、民主党が敬遠されるブランドが根付いてきたというものだ。
たとえば、大衆受けしやすい“アメリカン・ドリーム”ひとつとっても、一念発起して夢を実現させてきたIT成金たちの多くが、民主党とは距離を置き、共和党員として活動していることも知られている。
近年の共和党政権の中で、最も大衆受けする経済手法としていまだに語り草になっているのが、レーガン大統領(1981~89)が打ち出したいわゆる“trickle-down economy”だった。“trickle-down”とは英語で「水が少しずつ滴り落ちる」ことを意味し、経済学では「上流階級や大企業が潤えば、その効果がやがて徐々に中、低所得層に波及し、最終的に国全体が豊かになる」というものだ。
新聞社のワシントン特派員だった筆者は当時、レーガン大統領がホワイトハウスでの記者会見、連邦議会での一般教書読み上げなどの際に、自らの経済政策をアピールする“キーワード”として決まってこの“trickle-down economy”を連発したのを記憶している。
