2026年6月7日(日)

オトナの教養 週末の一冊

2026年6月7日

 打率は日々上下する数字であるがゆえに一喜一憂しやすく、感情が揺れ動きやすい。このため意図的に安打数という目標をシーズンの初めにセットし、シーズン中も常に意識し続けたという。

注意を「戻す」技術とは

 ただ著者は、集中は技術であり、一気に身につくものではないゆえに段階を踏むべきだとも指摘する。具体的には、最初は自分にとっての「戻り先」がどこにあったのかに気づく段階であり、次は注意がズレた時に意識的に戻り先に戻そうとする段階。さらに注意を「戻そう」という操作そのものがあまり意識にのぼらなくなる段階もあり、ズレたことに気づいても出来事の流れにそのまま注意が向き続ける時間が増えていくという。

 どうすれば注意を行動に戻し続けることができるのか。著者は、注意は「信頼できる行動」に戻りやすいと指摘する。

 行動への信頼とは、「そこに戻れば、本当に自分のプレーができる」という実感のことです。注意は「正しい行動」よりも、「信頼できる行動」に戻りやすいのです。その行動には、目に見える動きだけでなく、その動きを生み出す感覚や意図も含まれます。

ビジネスでの活用

 終章で、集中力革命はスポーツに限らず、ビジネスにも通じることを著者は説く。注意が逸れてきたら、「今、ここで、できる行動」に注意を戻しつづけることが重要だといい、これはアスリートと同じである。自分が指導的な立場にいる場合には、目の前の相手がこの場で何を果たそうとしているかという意図に注意を戻すことで、関わり方を考えていくことの重要性を指摘する。

 身のまわりに刺激が多い現代、集中力の維持は難しい。本書で示される内容は、新しい視点でありながら誰もが実践できる手法であり、大いに参考になる。

 本書で繰り返し強調される思考の扱い方を日常生活で実践してみると、見える世界が少しずつ変わってくるかもしれない。そんな思いや新たな気付きもたらしてくれる力作である。

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