台湾海峡を「無人の地獄」に変える
アメリカがここまで猛烈な勢いで資金を投じる理由は明快だ。米軍のトップたちは、近い将来に起こり得る台湾海峡紛争を、最新鋭のステルス戦闘機や巨大な航空母艦同士が美しくぶつかり合うような「これまでの戦争」としては捉えていない。数万、数十万という「自律型AIドローンの群れ(スウォーム)」が、空・海・水中を埋め尽くす、近代初の大規模な「AI無人戦争」になると確信している。
この点について、米インド太平洋軍司令官のサミュエル・パパロ海軍大将は、米シンクタンクやメディアの取材に対し、非常に攻撃的かつ具体的な戦略を公にしている。
「中国が台湾侵攻のために海峡を渡ろうとした瞬間、私は台湾海峡を何千もの無人システム(自律型ドローン、無人艇、無人潜水艇)で埋め尽くし、**『無人の地獄(アンマンド・ヘルスケープ)』に変える。これにより、敵を徹底的に足止めし、打撃を与える。その間に、米軍と東盟諸国が本格的な反撃を展開するための『1カ月の時間』を稼ぐのだ」(米シンクタンク「CNAS(新アメリカ安全保障センター)」等の分析レポートより筆者要約・引用)
中国軍がどれほど強力なミサイルや艦船を揃えようとも、自律的に標的を判断して群れで襲いかかる無数の安価なAIドローンをすべて迎撃することは不可能だ。米軍はこの「ヘルスケープ(地獄環境)戦略」を完全に実戦配備のフェーズへと移している。
防衛テックの異端児「Anduril」がもたらしたゲームチェンジ
この「無人の地獄」を実現するため、ペンタゴンが伝統的な巨大軍需企業ではなく、シリコンバレー発の防衛テック・スタートアップを主役に抜擢した。その筆頭が、新興防衛企業Anduril Industries(アンドゥリル・インダストリーズ)だ。
米国防イノベーションユニット(DIU)は、レプリケーター構想を通じて調達される数千もの多種多様な無人機を統括する「頭脳(自律共同チーム契約)」として、Anduril社のソフトウェア・プラットフォーム「Lattice for Mission Autonomy(ミッション自律用ラティス)」の採用を決定した(参考:Anduril社公式発表)。
Latticeの恐るべき点は、自社のドローンだけでなく、他社製の無人航空機(UAV)、無人地上車両(UGV)、自爆型ドローン、さらには無人潜水艇(UUV)までを単一のAIネットワークに統合できる「オープンアーキテクチャ(開放型設計)」にある。これにより、1人の人間のオペレーターがチェスの駒を動かすように、数百〜数千機のドローン群に「エリアの捜索」「標敵の自動追跡・インターセプト(迎撃)」といった高度な共同任務を直感的に命令できるようになる。
ハードウェア面でも、Anduril社のモジュール式偵察ドローン「Ghost-X」や長距離自爆ドローン「Altius-600」が構想の主力として次々に選定され、急速に量産ラインが構築されている(参考:DefenseScoop 報道)。米軍は「高価な兵器を少数つくる」時代から、「安価で消耗可能なAI兵器をソフトウェアで繋ぎ、圧倒的な『量』で圧倒する」時代へと完全にゲームのルールを書き換えたのだ。
