日本が対応すべき3つの致命的死角
ひるがえって、我が国の現状はどうだろうか。来日した米シンクタンク所長が危惧したように、日本の防衛議論は米軍のこの大トランスフォーメーションから完全に蚊帳の外に置かれている。
自衛隊が今なお「昭和・平成の延長線」の防衛ドクトリンにしがみついている間に、隣国の台湾海峡は「AI無人戦争」の主戦場と化そうとしている。日本が至急対応すべき死角は以下の3点に集約される。
①「高額な有人兵器至上主義」というサンクコストの罠
自衛隊の防衛費増額(国内総生産〈GDP〉比2%への増額)のニュースは記憶に新しいが、その中身の多くは依然として、戦闘機、護衛艦、戦車、大型ミサイルといった「極めて高額で、一度失うと代替が効かない有人兵器」の購入・維持に割かれている。
これらが、数万円〜数十万円の自爆ドローン数万機による「飽和攻撃」に晒された時、いかに最新鋭のイージス艦といえども防空ミサイルを撃ち尽くし、経済的にも物理的にも瞬時に無力化される。現代戦において、「高価な1機の有人兵器」は「数千機の安価なAIドローン」に勝てないというウクライナ戦争の教訓を、日本は予算配分のレベルで無視し続けている。
② 防衛テックにおける「民間スタートアップ」の排除
米軍の「DAWG」や「レプリケーター構想」が機能しているのは、ロッキード・マーティンやボーイングといった伝統的な巨大軍需産業(プライム・ベンダー)だけでなく、Anduril社のような民間のAI・シリコンバレー系スタートアップから最新技術を数カ月単位で吸い上げる仕組み(DIU:国防イノベーションユニットなど)が機能しているからだ。
対する日本は、防衛調達の構造が極めて閉鎖的であり、民間の優れたAIエンジニアやロボティクス開発者が防衛省のプロジェクトに参画する障壁が依然として高すぎる。官僚主義的な前例踏襲を打破し、民間のイノベーションを軍事に直結させるエコシステムを急造しなければ、技術の進化スピードで中国に完敗する。
③ サプライチェーンにおける「脱中国」の遅れ
台湾の頼清徳政権は、商用ドローンの国内生産投資を国家主導で進め、独自の「ハリネズミ防衛(レジリエンス強化)」を急いでいる。ドローンの部品やAIチップ、バッテリーのサプライチェーンを中国に依存していては、有事の瞬間に供給を止められ、自滅することを理解しているからだ。
日本国内を見渡せば、産業用・ホビー用を問わず、ドローン市場やその部品供給網はいまだに中国製に深く依存している。サイバーセキュリティ、およびエージェントAIのバックドア(不正裏口)排除の観点からも、自衛隊や重要インフラが使用するドローン・AIの「完全国産化・サプライチェーンの脱中国」は、1日も猶予のない国防上の最優先課題である。
時は一刻を争う
米軍が海兵隊の予算を凌駕するほどの超巨額資金を投じてまでAI戦争へのシフトを急いでいるという事実は、「次の有事(台湾海峡紛争)」が想定よりも遥か近くに迫っているという、米国防総省の危機感に他ならない。
アメリカが「無人の地獄(ヘルスケープ)」戦略によって台湾海峡で中国軍を足止めしてくれるとしても、その側背に位置する日本が、サイバーセキュリティもドローン生産体制も、そしてエージェントAIの運用能力も脆弱なままであれば、日本自身が全体の防衛ラインの「最大の弱点(ボトルネック)」となり、ドミノ倒しのように巻き込まれるだろう。
日本が従来の「防衛費増額の枠組み(既存の有人兵器の買い増し)」に終始している時間は、もう一秒たりとも残されていない。MITやリンカーン研究所の最新の研究成果、そして米高官が残していった警告を重く受け止め、我が国は今すぐ「ドローン・AI・サイバー」を基軸とした新しい防衛国家へと、超法規的・超スピードで舵を切るべきである。
