余計なことをやり過ぎた
この結果は、クールジャパンが本来の仕事をしていればそんなことにはならなかったと言えるかもしれない。そもそも、ドラマ・アニメ・バラエティを現地語の字幕・吹き替えで届ける、日本のコンテンツに関心を持ち国内でビジネスにしたい人に売り込む、同時に海賊版を取り締まり、知的財産権を確保するという仕事だろう。それだけなら、そんなにお金はかからない。大きな金額にするために大プロジェクト化して失敗したのだろう。
つまり、クールジャパンを世界に売り込むために巨額の予算が必要だと喧伝して、予算を取った以上は使わなければならないとなって失敗したのだろう。また、巨額の予算を管理運営するための費用も巨額となる。
ファンド設立時からの累積必要経費は238億円になるという。内訳としては、人件費(101億円)、調査研究費(25億円)、地代家賃等(23億円)などである(経済産業省「株式会社海外需要開拓支援機構について」26年2月)。
本来のことをやろうとしても大失敗
クールジャパン機構は、余計なことをやり過ぎて失敗したと言えるだろうが、本来のことをしようとしてもうまくいかなかった。クールジャパン機構ではないものの、官民ファンドの産業革新機構が22.1億円出資したANEW(株式会社All Nippon Entertainment Works、11年設立)という会社がある。「日本の物語のハリウッド映画化を促進することを通じて、日本の映画、放送コンテンツなど日本の知的財産の海外展開の成功事例を加速させる」ということなので、まさにクールジャパン機構が出資するに相応しい会社である。ANEWが設立された後の13年にクールジャパン機構が設立されたので、出資がなされなかっただけだろう。
ところが、ただ一つの映画化も実現することなく、出資額のほぼ全額を失って解散した。これは、ANEWが映画ビジネスの特性を理解していなかったことによる。
そもそも、映画は一本ごとに才能とお金を集めて作られるものであり、プロデューサーは企画、脚本、監督・主演の決定、現実の制作、広告、配給などそれぞれの段階でリスクを負いながら資金集め、提供するものだ。ところが、会社を作ってそのスタッフに高給を払いながら、まったく現実の映画化ができなかったというものだ(この顛末はヒロ・マスダ『日本の映画産業を殺すクールジャパンマネー』光文社新書、2020年、による)。

