その後任者をどうするのかは、それほど先の課題ではなく、第5期目に入る前の引退を前提とすれば、トップ人事をやる最も適切な機会であるのはその前の共産党大会(すなわち、来年27年)であり、その機会に少なくとも習近平の後任含みの人材を何人か中央政治局常務委員(いわゆる、チャイナセブン)に入れておく必要があることになる。だからこそ、来年の共産党大会に向けて、厳しい指導部人事の駆け引きが既に起こっており、これをチャイナウォッチャーは注目しているのであり、張又侠他の軍高官の粛清も、この文脈で注目されているのである。
現在のチャイナセブンの年齢は筆頭副首相の丁薛祥(63歳)を除けば軒並み60代後半で、平均年齢が69歳になろうとする中で、5年後に習近平の後任になり得る50代中頃~60代前半の人間を入れれば、その含意は外部に明らかになり、4期目を開始したとしても、習近平は即座にレームダックになるので、習近平派はそれをできるだけ遅らせようとし(例えば、49年の建国100周年(中華民族の偉大なる復興実現)までの中間点となる35年(第5期目の中間点)までは習近平はやる等)、反習近平派はそれを来年実現しようとするという状況なのである。
事故をどう収めたか
それでは、なぜ今回の事故がこのような人事の駆け引きに影響するかと言えば、現在チャイナセブンの中で最も習近平に近いとみられている蔡奇は治安担当であり、この事故の責任は突き詰めれば彼まで行きつき得るからだろう。習近平派としては、それは可能な限り避けたい。
さて、今回のビルへの突っ込みが意図的か事故かについては、当局は事件からちょうど1週間後の7月3日に、パイロットは一人暮らしのフリーランス労働者で離婚歴がある66歳の北京市在住の劉という男性だと発表。彼の日記に「自分の人生を終わらせるという、複数の記述」があったとして「包括的な調査により、個人的な理由が原因となった、公共の安全を脅かす事件と結論付けられた」と発表した。
事故か意図的事件かを巡る議論の過熱化を収めるための対応だろうが、そうなると、「なぜ防止できなかったのか」という論点に今後の議論が集中し「責任問題」に焦点が当たっていく可能性があると思われる。
それにしても、大阪万博の際に空飛ぶ自動車のデモ飛行さえできなかった日本に比べ、中国は「低層経済」で主導権を握るべく努力しているが、その一方で厳しい規制を導入しなければならない、というのは皮肉なことだ。

