半導体産業を支える
リーダー育成の現場
新竹科学園区内にある国立清華大学と国立陽明交通大学には、それぞれ半導体研究学院が設置されている。キャンパスに足を踏み入れると、工場エリアの静けさとは対照的に、多くの学生たちが構内を行き交っていたのが印象的だった。
小誌記者が訪れた清華大学半導体研究学院の設立は2022年。半導体産業の急成長を受け、TSMCやメディアテックなど半導体企業の経営者らが政府に人材育成の必要性を提言し、政府が台湾の主要大学に設立を要請したのがきっかけだ。設立費用も企業と政府が共同で負担し、政府側も教育部ではなく国家発展委員会が予算を拠出するなど、まさに国家戦略の一つに位置付けられる。
そこで育成されているのはどのような人材なのか。同学院で半導体人材育成の最前線に立つ賴志煌副院長は、「私たちは優秀なエンジニアではなく、半導体産業のリーダーを育てています」と話す。
同学院では、IC設計、材料、製造プロセス、デバイスの4分野を柱として教育を行うが、「専門」だけを学べばよいわけではない。他分野の基礎を横断的に履修する他、政治経済や技術経営、地政学までカリキュラムに組み込まれている。
「リーダーには産業全体を俯瞰する視点が求められます。技術だけでなく広い視野を養うことが欠かせません」と賴氏は指摘する。
また、同学院には半導体大手を含む12社がパートナーとして参画し、共同研究だけでなく授業も担う。例えば先端パッケージングの講義はTSMCの副社長が担当し、賴氏自身も米マイクロン・テクノロジーの技術者とともに半導体メモリーのDRAM技術を教えているという。大学教員が基礎理論を教え、企業が最前線の技術や課題を伝えることで、学生は在学中から産業界と日常的に接点を持つことが可能になる。
こうした環境は海外からも優秀な学生を引き寄せる。インド出身の修士課程学生、V ソメシュワル ラオさんもその一人だ。世界有数の半導体企業との産学連携に魅力を感じ、インドの国立科学技術研究所で学士号を取得した後、台湾へ進学した。
「学生が単なる研究ではなく、実際の企業のプロジェクトに携われるのは貴重な経験です。最先端の技術や産業界で何が起きているのかを実践的に学べるため、卒業後もスムーズに研究開発の現場へ入ることができます」と話す。
実際、ラオさんは2年間、TSMCやPSMC(力晶積成電子製造)との共同研究に携わり、卒業後は同様の半導体企業で研究開発に携わることを希望している。大学での学びが、産業界への第一歩となっていた。
もちろん、大企業へ人材を送り出すことだけがゴールではない。新竹で清華大学と双璧を成す国立陽明交通大学で産学共創部(OIAC)の代表を務める黄經堯教授は、「研究成果を論文で終わらせるのではなく、社会実装まで見据えることが最も重要です」と話す。OIACでは米スタンフォード大学のモデルと同様に、技術移転やスタートアップの創出を支援することで、学生が自らの技術を事業として世に送り出す機会を生み出している。
