世界では都市部の住民が増える一方だ(図-2)。これから世界の多くの都市の気温が上昇する。
国連環境計画は、25年の冷房用電力需要2.9兆キロワット時(kWh)は飛躍的に増えるエアコンにより50年に3倍に膨らむと予想している。ヒートアイランド現象も加速するだろう。
熱波の被害は
6月最後の週末には、欧州各地でさまざまなイベントが予定されていたが、大半が熱波のため中止を余儀なくされた。
ハンブルグでのハーフマラソン、パリのロンシャン競馬場で開催されるソリデイズ音楽祭は中止、LGBTQ(性的少数者)の「プライドマーチ」が延期された。オランダで開催される予定だった野外音楽祭は直前に中止が決まったので、集まっていた数千人の観客が騒ぎ警察が出動した。
車の中に幼児が閉じ込められ亡くなる事件も相次いで報じられた。フランスでは6月下旬までに川を中心に溺れて亡くなった人は、55人と発表された。
パリ市は医療機関の負担を軽減するため6月下旬の週末にアルコール飲料の販売を禁止した。アルコールの影響を受けた状態でのジョギング、水泳などを防ぐためとされる。
人口約4億5000万人のEUで24年に熱中症で亡くなった人は、4万5300人と報告されている。人口3億4000万人の米国では米国疾病予防管理センターによると23年に約2300人が熱中症で亡くなった。
米国の人口との比較ではEUの死者は極めて大きく、人口10万人当たり米国の約15倍になる。
この欧米の差には理由がある。欧州の熱波が必ずしも米国よりも強烈ということではない。米国の死者は死亡診断書に熱中症と記載された数字だが、欧州の死亡者は、熱波により死期が早まったと考えられる超過死亡数として計算される。
米国でも超過死亡数が試算されているが、欧州との比較では数分の1のようだ。欧州での死者が相対的に多い理由の一つには低いエアコン普及率もあげられている。エアコンが広く普及していれば超過死亡数は大きく減少すると指摘されている。
エアコン大国は日本と米国
電気式のルームエアコンが米国で開発されたのは1902年だ。30年ごろに現在のエアコンの原型が製造されたが、大きく高価だったので米国でも普及には時間がかかった。
米国で本格的な導入が始まったのは、60年代から70年代とされるが、90年代でも米国北東部の住宅にエアコンがある比率は6割程度だった。
94年の米国の地域別のエアコンがある住宅の比率は、ニューヨーク州、ペンシルバニア州などの北東部が61%、イリノイ州などの中西部80%、カリフォルニア州、コロラド州などの西部50%、温度も湿度も高いフロリア州、ルイジアナ州などの南部は98%だった(図-3)。
その後、米国ではエアコンが広く普及する。23年のいくつかの州の住宅のエアコン保有率を図‐4に示した。ペンシルバニア州は94.3%に上昇した。ニューヨーク州も90.2%だが、カリフォルニア州は78.6%しかない。驚くことに暑いハワイ州は56.6%。アラスカ州を除けば全米最低の普及率だ。
カリフォルニア州とハワイ州でのエアコン普及率が低い理由は、欧州での低いエアコン普及率の原因に通じるため、後ほど触れたい。
現在米国の新築住宅の98%にはエアコンがついている。やはりエアコンがあれば快適だ。米国の平均所得がこの30年間大きく上昇し普及率向上に貢献した。
94年の平均世帯所得4万3130ドル(24年価格換算8万4710ドル)は24年12万1000ドル(1940万円)になった。



