日本の24年の平均世帯所得575万2000円は米国の3分の1以下だが、湿度の高い気候ゆえに日本は米国と並び普及率9割を超える世界の2大エアコン大国になった。
ドイツ、フランスなどの平均所得は米国には劣るものの日本を上回るが、先に触れたような理由により、エアコン普及率は日米に大きく劣る。
熱中症により亡くなる方が出る中でエアコンは売れている。しかし、欧州のエアコン普及率が日米並みになることはなさそうだ。
エアコンが普及しない欧州社会
ドイツ連邦政府統計局の資料によると、25年にドイツで新築された病院の34.4%にしかエアコンは設置されていない。国際エネルギー機関(IEA)の資料によると、23年のドイツの住宅用エアコンの台数は110万台だ。4100万を超える世帯数があり、普及率は約3%だ。英国ではエアコンのある世帯は全体の約5%だ。
欧州社会でエアコンの普及が進んでいるのは、イタリア、スペインなど地中海沿岸諸国だ。それぞれ60%、41%だ。フランスは25%とされるが、北部は10%以下、南部の地中海沿いは60%を超えている。
欧州の北部の住宅は、熱を逃がさないように作られている。EUでは暖房に使用するエネルギー量は、家庭のエネルギー消費の61.5%を占めている(図-5)。北国ではその比率はさらに上昇する。例えばドイツは64.6%だ。エネルギー消費抑制の方法は家の中の熱の維持だ。
熱を逃がさない家の夏の過ごし方は、夜間に窓を開け冷たい空気を取り入れ昼間は窓を閉め、カーテンを降ろし夜の冷気を逃がさないように過ごす。
しかし、熱波が来襲し熱帯夜が続けば家を冷やす方法はない。エアコンがなければ過ごせない。
現在欧州ではエアコンが売れているが、後ろに排気パイプを持つ日本ではスポットクーラーと呼ばれるモノブロックタイプがもっとも売れているようだ。工事の必要がなく、窓から排気管を外に出せばよい簡単な形状だ。中国製の壁に穴を開けなくて良い簡易型のセパレートタイプも売れている。
ドイツでは、今年販売されたエアコンの7割がモノブロックタイプ、3割が室外機を持つセパレートタイプだ。
日本のエアコンメーカーもEUで大きなシェアを持っているが、熱波によりハイアール、美的電器、TCLなどの中国製が売れていると報道されている。中国は欧州の電気自動車市場で大きなシェアを獲得したが、エアコン市場も席巻しそうだ。
セパレートタイプが敬遠される理由は、景観上の問題がある地域の住宅あるいは賃貸住宅への設置が困難なことに加え、政府の規制もある。
英国ではエアコンの設置が法的に難しいとの発信が多くあったので、政府が否定する声明を発表した。その中では、「建物の外観に重大な影響を与えない限り、許可は必要ないが、地元自治体に規則を確認する必要がある」とする一方、自治体に常識的な対応を取るように呼び掛けている。

