石油精製施設への攻撃も効果を発揮した。原油生産国のロシアのガソリンスタンドで車が長蛇の列をなす光景は全世界で報道され、経済面での大きな打撃を与えた。現在、ロシア国内の石油精製施設の約3分の1が稼働を停止しているとされる。
2024年には武器生産やインド、中国などによる積極的な原油輸入を背景に、4%を超えたロシアの経済成長率だが、今年は0.6%にとどまると予想されている。インフレ懸念から政策金利は高水準で推移しており、景気低迷を加速させている。
戦闘においても、前線での進軍の停滞が鮮明になっている。昨年、ロシア軍は約4000平方キロメートルのウクライナの領土を占領したとされるが、今年上半期は最大600平方キロメートル程度にとどまった模様だ。無謀な攻撃とウクライナ軍の防衛強化でロシア軍の死傷者数はさらに増大ペースが上がっており、死亡、または重傷を負う兵士数は1カ月あたり3万人規模に達しているとも推計されている。
これは入隊数を上回るペースで、ロシア軍は深刻な人員不足に直面する可能性がある。地方の困窮する中高年者まで報奨金で駆り出して、戦争に投入してきたロシア軍だが、地方自治体の財政悪化で報奨金の拠出が困難になり、さらに被害の実態が知られるようになって入隊ペースが落ちているという。
出始めた“戦闘凍結”の声
しかしそのような状況でも、プーチン大統領が考えを改める要素とはなっていない。
「ロシアを戦場で打ち負かすために、敵はまさにテロリストの手法を使いわが国民を攻撃している」「しかしロシア国民が屈することは決してあり得ない」
7月27日に行われたロシア下院での演説でプーチン氏はそう豪語し、さらなる戦闘継続に意欲を見せた。「3日で終わる」との見通しで開始した戦争が5年目に突入し、50万人以上の自国軍の死者が発生している実態などは無視し、ウクライナ軍に自国領土を攻撃されている実情を逆手に、国民に檄を飛ばした格好だ。
ロシア国内では、すでにプーチン氏が思い描いたような勝利を得られるとは信じていない人々が増大しているもようだ。
ロシア高等経済学院のワシリー・カシン主任研究員は最近発表した論文で「(ウクライナの)反ロシア政権の排除という目標は、国全体を完全、かつ長期的に軍事占領しない限り、現段階では根本的に達成不可能だ」と断じ、さらに「広大なウクライナ領土をロシアが併合し、支配する能力も備えていない」と指摘した。その上で、「核危機を回避し、全面的な大惨事を防ぐ解決策は、状況を凍結すること(紛争状態を凍結させること)だ」と分析してみせた。
