シリコンバレーの中では、アップル社など一部の企業では、まだ「週3日出勤」として週2日のリモート勤務を認めている。アップルの場合はそもそも情報漏洩には厳しい一方で、社員のモラルが比較的高いことなどから、リモートに寛容な条件が揃っているようだ。
日本企業が出社を求める2つの事情
一方で、日本の場合は経営層の中には、例に挙げたGMOのように、出勤への強いこだわりがある。その上で、リモート勤務よりも出勤の方が生産性は高いという信念も強い。この点については、日米で大きな差がある。理由としては2つあるように思う。
日本の場合は、年功序列人事のために、管理職よりも若手の実務部隊が情報もノウハウも握っている。個別の技術、個別の顧客情報だけでなく、大局的な判断に必要な専門ノウハウにおいても、情報の質量と理解度に上下逆転が起きている。そうなると、管理職としては若手実務クラスを職場に繋ぎ止めて、いつでもブリーフィングさせたいという強い動機が起きる。
一方で若手の方は自分のタスクに専念したいので、オフィスで質問攻めにしてくる上席の存在は生産性を阻害するという構造がある。これは欧米でもアジアでも見られない、日本独自の問題だ。
もう一つ、日本型の雇用では個々人の職務範囲を職務記述書で明確化する習慣が薄い。また、職務範囲外の業務に手を伸ばすことがご法度という感覚もない。したがって、管理者や経営者としては、優秀な社員の様子を見ていて、その社員が自分のタスクを終えたらすぐに遅れている他のタスクを振るということでチームの生産性を上げたがる。
一方で、リモートの場合は手すきの社員が、タスクの遅れがちな他の社員のフォローに自然に回るという動きは取りにくい。そうした点から見て、オフィスに出勤させた方が柔軟に各人にタスクを振れる、従って生産性が上がると考えているのであろう。
出勤かリモートかの議論の先には
しかしながら、グローバルな競争が加速する現代、こうした日本型の勤務というのは、トータルの競争力には全くならない。スキルと情報のない上席には報酬と権限があり、スキルと情報のある自分にはないという環境、そして優秀であれば仕事が殺到する不公平を放置していれば、優秀な人材は去っていくのが自然だからだ。
そんなわけで、経営サイドが出勤にこだわる理由というのは、日本とアメリカではかなり差があるように思われる。そうこうしているうちに、出勤かリモートかという論争どころではなく、アメリカだけでなく、日本の場合も、人間かAIかという業務改革の大変革期に突入することになるのではないだろうか。
