2026年8月7日(金)

脱「ゼロリスク信仰」へのススメ

2026年8月7日

 東京や熊本のような高湿度では、同じ気温でも汗が乾かず、汗が滴り落ちるだけで水分を失い、体温が下がらない。加えて夜間も気温が25℃を下回らない熱帯夜が続くと、日中に溜めた熱を夜に捨てることができず、熱が累積していく。

 だからこそ、熱中症の指標も気温ではなく、湿度・輻射を織り込んだ「暑さ指数」であり、この値と熱中症警戒アラートを日々確認することが対策の起点になる。

 身体が熱を捨てられなくなる限界は、湿度を織り込んだ「湿球温度」で表される。かつて気候学では、湿球温度35℃が「人が適応できる理論的限界」とされてきた。ここを超えると、健康な人が日陰で安静にし、水を十分にとっていても、汗が蒸発せず深部体温が際限なく上がり続ける。

 ところが近年、この閾値を実際に人体で測った研究で、現実の限界が理論値よりかなり低いことが分かった。若く健康な成人が軽い日常活動をする条件でさえ、湿潤環境での限界湿球温度は平均30.6℃で、35℃を大きく下回っていたのだ。

 そして高齢者、とりわけ高齢女性では限界がさらに低くなる。熱中症死亡が高齢者に集中するのは、加齢によって生理的限界が下がっているからである。

 また「エアコン生活に慣れて自然変動に対応できなくなった」という側面も、無視はできない。暑さへの順化(暑熱順化)は1〜2週間かかる。年中エアコンの効いた室内で過ごす生活では、この順化が行われず、今年の梅雨明け直後のような急な暑さに対応できない。ただし、亡くなるのは生理的にもっとも脆弱な人々であり、その人たちにとってエアコンは医療上の必需品であることを忘れてはいけない。

温暖化とヒートアイランド

 今年の高温多湿の原因は2つある。第1は、都市化(ヒートアイランド)である。 気象庁によれば、この100年で東京の平均気温は3.2℃上昇した一方、都市化の影響が小さい地点の平均は1.5℃にとどまる。差し引き、東京の昇温のおよそ半分は局地的なヒートアイランドによるものだ。

 アスファルトやコンクリートの蓄熱、緑地の減少、人工排熱がその原因で、影響は夜間と冬の最低気温にとくに強く表れる。だから熱帯夜が激増し、東京では100年前の年数日から、近年は年40日超になる年もある。皮肉なのは、エアコンが室外機から屋外へ熱を捨てることでヒートアイランドを悪化させ、さらに冷房需要を高めるという悪循環を生む点である。


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