派遣料金は誰のために使われるのか
それは、引き上げられた派遣料金は、誰のためのものなのかという問題である。派遣料金は、そのまま派遣社員の賃金になるわけではない。派遣会社の営業費用や教育費、管理費、利益なども含まれている。
そのため、派遣料金が上昇したとしても、それが十分に派遣社員へ還元される保証はない。もし料金だけが上がり、その利益が派遣会社にとどまるのであれば、派遣会社が介在する意味そのものが問われることになる。
では、派遣会社は何のために存在するのだろうか。派遣会社はこれまで、企業と労働者を結び付け、必要な時に必要な人材を供給する「労働力の需給調整」を担ってきた。しかし、その機能は企業に柔軟な人員調整を可能にする一方で、雇用の不安定さや景気変動のリスクを派遣労働者に集中させる側面も有していた。
実際、派遣切りや低賃金、ワーキングプアの問題を通じて、派遣という仕組みが労働者の生活を不安定にする危険性も明らかになった。だからこそ、人材不足が深刻化し、働き方が多様化した現在、派遣会社の存在意義を、単なる人材の供給や需給調整だけに求めることはできない。
仕事を紹介するだけでなく、キャリア形成を支援すること、能力開発の機会を提供すること、ミスマッチを防ぐこと、就業後の相談やフォローを行うことなど、働く人の職業人生全体を支える機能がこれまで以上に重要になっている。派遣会社が得るマージンは、こうしたサービスを提供するための対価として社会から認められるべきものである。逆に言えば、派遣料金が上昇しても、こうした付加価値を十分に提供できていなければ、「派遣会社は何をしているのか」という疑問は避けられない。
データが示すキャリア支援の現実
厚生労働省の「令和4年派遣労働者実態調査」を見ると、派遣労働者の65.5%が過去1年間に何らかの教育訓練を受けている。したがって、派遣会社や派遣先が能力開発をまったく行っていないわけではない。しかし、その中身を詳しく見る必要がある。
派遣先で受けた教育訓練は37.4%、eラーニングは35.0%、派遣元で受けた教育訓練は31.2%であるのに対し、外部の教育訓練機関などで受けたOFF-JTは5.7%にとどまる。派遣元での訓練は入職時研修、派遣先では日々の業務を通じたOJTが中心である。
もちろん、仕事を始めるための研修や、職場で必要な技能を身につけるOJTは欠かせない。しかし、それだけでは、現在の派遣先を離れた後にも通用する能力や、中長期的なキャリアの形成につながるとは限らない。

