2026年8月10日(月)

Wedge REPORT

2026年8月10日

 実際、現在の業務に必要な技能を身につけた方法として最も多かったのは、「派遣先で就業中の技能蓄積」の48.4%であり、派遣元の教育訓練は25.9%だった。能力形成の多くを派遣先での経験に依存している実態がうかがえる。

 キャリア相談についても課題がある。派遣元にキャリアコンサルティングの相談窓口があると答えた人は46.4%だった一方、43.9%は窓口があるかどうか「わからない」と回答している。相談窓口は設置されているだけでは十分ではない。派遣労働者がその存在を知り、実際に利用でき、次の仕事や賃金の上昇、雇用の安定へとつながって初めて、キャリア支援としての意味を持つ。

 派遣労働者の側も、派遣会社に単なる仕事紹介以上の役割を求めている。派遣元に要望がある人は47.8%に上り、その内容は「賃金制度を改善してほしい」が58.6%、「継続した仕事を確保してほしい」が29.7%、「派遣先に対して、派遣先での直接雇用に切り替えるよう依頼してほしい」が21.6%だった。

 求められているのは、次の派遣先を紹介することだけではない。賃金を高め、仕事を途切れさせず、本人が望む場合にはより安定した雇用へ橋渡しすることである。

 これらの数字が示しているのは、派遣会社が教育訓練や相談制度をまったく設けていないということではない。問題は、それらが派遣労働者の賃金上昇や雇用の継続、次の仕事への移行といった具体的な成果に、どこまで結び付いているかである。研修を実施した、相談窓口を設けたという形式だけでは、働く人のキャリアを支えたことにはならない。

 派遣会社に求められるのは、派遣先を紹介して契約を更新することにとどまらず、本人の希望や適性を把握し、派遣先で得た経験を次の仕事や処遇改善へとつなげることである。正社員化を望む人には、その実現に向けた橋渡しも必要になる。派遣会社がこうした役割を果たして初めて、マージンは単なる仲介手数料ではなく、働く人の職業人生を支えるサービスの対価として理解されるだろう。

「紹介した後」の価値が問われる時代

 今回問われているのは、派遣料金の水準だけではない。派遣料金を引き上げるのであれば、その利益は誰に、どのような形で還元されるのか。派遣社員の処遇改善やキャリア形成につながっているのか。そして、派遣会社はその対価に見合う価値を提供しているのか。こうした問いに正面から答えることが求められている。

 人材を紹介すること自体は、もはや派遣会社だけの価値ではなくなりつつある。タイミーなどの雇用型労働プラットフォームは、AIやビッグデータを活用した迅速なマッチングに加え、働きぶりに応じた報酬向上の仕組みや正社員化への橋渡しにも取り組み始めている。こうした新たな競争環境の中で、派遣会社には「紹介した後」の価値がこれまで以上に問われている(『スキマバイトの増加は社会・経済的にプラスなのか?「自由な働き方」への満足度は高くても、“ワーキングプア”になることへの懸念』)。


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