その日の朝に、どこへ行って何の作業をするか決まる、という林業事業体もあった。言われるままに動かされる立場では工夫の余地が生まれないだろう。
その根幹に林野庁の政策がある。地域の特性を無視して全国画一的な政策を強要し、都道府県もそんな机上計画に従うばかり。森林組合も現場の作業員に判断させない。
日本の林業界の問題点は、ここに集約されているように感じる。現場を見ずに計画が作られ、各作業の連携が悪く情報も共有しづらい。また現場の従事者の判断力を鍛えようとしない。現場で培った知識や技能もほかの現場にフィードバックされにくいのである。
技術的なイノベーションより前にすべきこと
林野庁は、所得引き上げのための手段として「スマート林業」を掲げている。AIやドローン、遠隔操作の自動運転機械などを実装し、サプライチェーンをデジタル化し、適切な利益が山側に還元される仕組みを作る……のだそうだ。
人材評価も、熟練者の技能検定などで能力評価制度を導入し、キャリアに応じた昇給を実現させる……のだそうだ。
そして下刈りも、自動草刈り機を走らせるとか、重機に草刈り用のアタッチメントを装備させて行う方法を提案している。が、地形に左右されるし、道がなくては重機を入れられない。急斜面ではむしろ危険だ。
いかにも官僚がデスクで考える作業効率を上げる方法である。
もちろんスマート林業、それに流通の合理化を進めることもいいだろう。しかし、大切なのは地道な現場の連携と判断を重視する姿勢を持つことだ。そうすると収益が増え、真夏の林業を楽しんで行う人が集まれば人手不足解消にもつながる。
ことは下刈り作業、いや林業界だけの話でもないだろう。日本の労働生産性は世界的に見ても低い。それは多くの業界が、管理部門と作業部門の連携が悪いからではないか。技術的なイノベーションより前に改革すべきことは多くある。
……とまあ、真夏の炎天下の下刈りを思い出して、そんなことを考えたのだった。
