部活由来のスポーツではないことも大きい。ピックルボールは多くの人が初めて触れる競技だ。試合中にコートを走り回ることも少なく、老若男女が楽しめるスポーツとして世界中で人気に火がついており、「その参入のしやすさはむしろ、ランニングやゴルフに近い」(熊倉さん)。
ただ、熊倉さんを突き動かした〝本当のおもしろさ〟は別にあるという。
「いつでも、誰とでも」
ピックルボールの世界観
2024年、熊倉さんが米国の西海岸で本場のピックルボールを見た時のこと。パドルを持ってコートを訪れると、そこでは「オープンプレー」と呼ばれる時間帯が設けられていた。グループで施設を貸し切るのではなく、その場で出会った人と自由にペアを組み、共にプレーを楽しむのだ。
「まるでオンラインゲームの『リアル版』のような光景でした。これこそが、ピックルボールの文化なんです。誰とでも気軽につながれる世界を日本にもつくれれば、人々はもっと幸せになれるはずです」
ピックルボールワンは世界大会の企画運営や専用コートの運営、グッズ販売などを手掛ける。メディア露出も増え、国内の競技人口は一昨年に約1万人、昨年には約4.5万人、今年7月時点では約33万人と、うなぎのぼりだ。熊倉さんは言う。
「喫緊の課題はコート数の少なさです。人工芝のテニスコートはピックルボールのコートに簡単には転用できない事情もあります。だからこそまずはプレーできる環境を整える。『産業』としての歯車はそこから回り始めます。こんな瞬間に立ち会えるのは、100年に一度あるかどうか。そんな私は幸せ者です」
