2026年9月3日(木)

スポーツの新潮流

2026年9月3日

世界初のプロリーグが
日本で発足したダンス

 20年、世界初のプロダンスリーグ「Dリーグ」が日本で発足した。

Dリーガーのパフォーマンスは、ダンス経験の有無を問わず観た人々を魅了する(D.LEAGUE 25-26)

 「メジャーカルチャー、あるいは社会そのものへの反発心、ダンサーの〝とがった〟エネルギーをうまくビジネスに昇華できた」

 そう語るのはDリーグ代表取締役の神田勘太朗さん。日本におけるダンス振興の仕掛け人だ。

Dリーグ創設に際し、既存のプロリーグや国際競技大会を研究し尽くしたと語る神田勘太朗さん

 神田さんは05年に「DANCEALIVE」を創設。ダンサーが1対1で向き合い、DJが流す音楽に合わせて即興で踊り競い合うイベントで、決勝大会は東京・両国国技館で開催するなど、ダンス人気を加速させてきた。

 しかし、そこにある反省があった。

 「この大会は、ダンサーがダンサー相手に踊る『玄人向け』のコンテンツです。これはこれで大切ですが、12年度から中学校で義務教育化されるなどダンスの裾野が広がる中で、ダンサーの『その先』をつくる必要があると思ったんです」

 Dリーグ発足当初、野球でいう「球団」数は9つ。それぞれに15人前後のプロダンサーが所属しており、次シーズンからは20チームが参戦する。発足時の倍以上だ。文化、芸術、娯楽の全ての要素を持ち、ファッションや音楽、化粧品業界などとの親和性も極めて高い。若者の注目を集め続ける理由がよく分かる。

 だが、ダンスの力はエンターテインメントだけにとどまらない。

 Dリーグ発足当初からの9チームの一つ、「CHANGE RAPTURES」を運営するPERFは23年、高知県と包括連携協定を締結。現地の小・中・高校へDリーガーを送り込む「出張レッスン」や、地域の拠点とDリーガーをオンラインでつなぐ「リモートレッスン」など、地域支援に力を入れている。

 同社ゼネラルマネージャーの小林哲也さんは「音楽さえあればいつでも、どこでも、1人でも何人とでもできる。道具もいらない。スポーツにアクセスしたくてもできない、という中山間地域の子どもたちが抱える課題を、ダンスなら解決できる」と、その可能性の大きさを示す。

ダンスを通じていかにスポーツアクティベーションを実現できるか、熱を込めて語ってくれたPERFの小林哲也さん

 小林さんの志は他にもある。

 「スポーツビジネスの『王道』はロゴ掲出です。ただ、そこに胡坐をかくのではなく、スポーツの価値を最大化する発想が欠かせません」

 西武鉄道と企画したプロジェクト「エミダン!!」では、西武線沿線に通うダンス部所属の高校生に対し、Dリーガーがダンスの振り付け・作品制作を担当。昨年は9校35人、今年は11校50人の高校生が横のつながりをつくり、西武園ゆうえんちなどで作品を披露した。

 「高校生の技術向上、企業側から若年層へのアプローチ、沿線価値の向上の全てに貢献できました。ダンスを通じて、新たな価値創造のかたちを世に示せるよう努めます」

 日本のダンス界はどこへ向かうのか。前出の神田さんはその構想を語気を強めてこう話す。

 「目標はダンスのワールドカップ開催。日本から各国に『Dリーグ』モデルを輸出します。そのためにもまずはカルチャーとして育てていく。一昨年、セネガルで開催した『DANCEALIVE』では1000人の村人たちが深夜3時まで踊り続けていました。これがいつか、夢の入り口になると信じています」

 成長し続ける新競技から、目が離せない。

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Wedge 2026年9月号より
日本スポーツ界の新潮流 変革の時をつかめ
日本スポーツ界の新潮流 変革の時をつかめ

大谷翔平、三笘薫、北口榛花、阿部詩、八村塁、松山英樹……。世界で活躍する日本人選手がここ最近、増え続けている。国内では、スポーツの力をまちづくりへ生かそうと、スポーツ界・民間・行政の連携も広がっているほか、新たな競技の普及も進んでいる。一方、少子化などの課題は競技人口にも影響を及ぼし始め、精神論や根性論など「昭和的価値観」の指導のあり方も見直され始めた。まさに、日本スポーツ界は変革の時を迎えている。新潮流を、日本社会へどう生かしていくか─。32年ぶりに日本でアジア大会が開催される今、その可能性を探りたい。


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