2026年9月3日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2026年9月3日

 とはいえ、恒大集団のやり方は「やりすぎ」の域に達していた。23年6月末時点で、恒大集団の負債総額は2兆3882億元(約57兆円)、うちサプライヤーへの未払い金が44%、1兆565億元(約25兆円)を占める。

 恒大集団と並ぶ、民間不動産デベロッパーの雄である碧桂園(カントリーガーデン)の財務報告書を見ると、23年6月末時点の負債総額は1兆3641億元(約33兆円)。サプライヤーへの未払い金は32%の4485億元(約11兆円)であった。

 巨額ではあるが、恒大集団と比べると債務の総額も、未払い金の比率もかなり小さい。同じ高負債経営でも、恒大集団のえげつなさは別格だ。

 さらに、恒大集団は粉飾決算にも手を染めていた。24年3月に中国証券監督管理委員会が調査結果を発表し、19年に2139.89億元(約5.1兆円、当期営業収入の50%に相当)、20年に3501.57億元(約8.4兆円、同79%相当)の売上を水増ししていたことを明らかにした。中国メディアでは「世界最大級の粉飾決算」とも報じられたのだ。

中国不動産業界の現状

 恒大集団に対する抗議集会から表面化した中国不動産市場の危機は、その後、業界全体に広がっていった。何より大きかったのは、不動産価格は必ずや右肩上がりに上がり続けるという人々の楽観的な期待の消滅だ。

 21世紀に入って以降、中国の不動産市場は1年程度の短い踊り場こそあれ、ずっと右肩上がりで推移してきた。それが21年以降、現在に至るまで下落が続いているとなれば、もはや簡単には上がらないと考えるのが当然だろう。国家統計局によると、26年7月時点でも、70大中都市のうち47都市で新築住宅価格が前月比で下落している。

 中国の不動産市場はすでに成熟期に入ったとみるべきだ。ピーク比でほぼ半値になったとされるが、それでもまだ割高な物件は多い。

 待てば待つだけ価格が下がるとなれば、住宅購入希望者も手を出しづらい。中国の家計資産の多くは不動産で保有されているとされ、仮にその評価額が半減したのなら、家計資産の相当部分が消えた計算になる。民の怒りが募るのも当然だ。

 となれば、バブルで巨額の富を築いた経営者を厳しく罰することで、民衆の溜飲を下げようとしているのではないか。そもそも、中国では法の支配が確立していないのだから……外部から見るとそう推測したくなる。

 だが、決めつけは早計だ。裁判所の判決文を見ると、違法な資金集めや運用、政府機関への贈賄が罪状とされている。経営失敗責任で無期懲役となったわけではない。


新着記事

»もっと見る