2026年9月3日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2026年9月3日

 確かに違法な資金集め事件の中でも量刑は重めではある。判決文は「社会主義市場経済秩序を深刻に破壊」「犯罪金額が極めて大きく、情状が極めて悪質で、社会に与えた危害が特に深刻」と指摘しており、社会的影響の大きさが量刑を引き上げたのは間違いない。ただ、知人の日本人弁護士を介して中国人弁護士数人に匿名で話を聞いたところ、いずれも「さほど違和感のある量刑ではない」との答えだった。

 中国の官製メディアの報道は総じて抑制的で、「正義が下された」「悪人を倒した」といった煽りは見られないからだ。中国のSNSを見ても、判決そのものへの反応より、未完成物件(烂尾楼)の行方や住宅ローンの返済といった、実生活への影響の方に関心が集中している。つまりは家計資産への大きなダメージは、“悪人”に無期懲役の判決を下した程度では解消されないようだ。

習近平は支持を回復させられるか

 習近平総書記は12年秋の中国共産党大会でトップの座についた。その後は汚職官僚を次々摘発する反汚職運動が推進され、中国経済の成長という追い風もあって、支持する中国人は多かったように思う。といっても世論調査も選挙もないだけに、あくまで中国の人々と会話しての体感なのだが。

 筆者が中国で話を聞く限り、不動産不況以後、習近平体制への評価は明らかに冷えた。今も反汚職運動は続いているし、許家印のような大富豪であっても罰せられる。だが、それは支持には影響していないようだ。

 中国の不動産価格下落・家計資産毀損は現在進行形で続いている。その不満は誰かをみせしめで処罰することでは解消されない。

 来年秋には中国共産党大会が開催され、第4期習近平体制が発足することが確実視されている。過去の事例で言うと、その前には人気取り的な政策や宣伝が行われるのだが、果たして中国政府には民の不満を解消するカードはあるのだろうか?

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