日本も、そのアメリカを中心とした世界の民主化の流れの中で遅れてはいけないと考え、アメリカを世界標準とみなし、その後、政友会や民政党による二大政党制や、成人男子のみではあったけれども普通選挙を取り入れました。大日本帝国憲法を読む限り、政党内閣は予定されていなかったことがわかります。それでも、憲法を改正しない範囲で政治の実質的な運用として普通選挙制度のもとで政党内閣ができた。この実現は非常に大きな意義があったのです。ですから、憲法がどうであれ、運用の仕方で民主化が進んだというのは今日的な意味があると思いますね。
――他には100年前からどんな教訓が得られますか?
井上:先行きが見えないというのはいつの時代も同じだと思います。100年前の人たちは、そうした状況下で格差社会や経済停滞に対して、手探りだけどなんとかしたいと努力をしていました。そこから学ぶことは多いと思います。教訓を学ぶという点では、どの時代でも学ぶべき点はあると思います。先行きが見通せない中で、希望を捨てずにがんばっている人たちの姿を追体験し、良い部分と間違っていた部分を見極めることが大切です。
――本書をどんな人に読んで欲しいですか?
井上:「歴史は無味乾燥でつまらない」、「100年前と今となんの関係があるのか」と思っている人にこそ読んで欲しいと思っています。そうした人たちが読みやすいようにエピソードの記述を多くしています。100年前も今も変わらず人々は希望と不安を抱きながら毎日を一生懸命生きているんだ、自分たちもがんばろうと思って欲しいですね。そういうことが日本を良くすることに少しでも役立ってくれれば著者冥利に尽きますね。
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