2024年4月25日(木)

オトナの教養 週末の一冊

2014年8月15日

――まさに現在の国際政治の原型がつくられた時代ですね。一方でその頃からの課題はありますか?

井上:国際連盟が出来たのは画期的なことなんですが、アメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランスといった主要国が足並みを揃えないと決められないというのは、現在でも変わっていないですよね。

――当時の国際連盟での日本の立場はどうだったんですか?

井上:日本も形式的に戦勝国として常任理事国の立場を与えられてはいましたが、基本的には欧州の国際機構だったので末席でした。当時のヨーロッパの国々は民族問題を抱えていました。そこで、利害関係のない日本が民族問題の特別会議の議長国となり、解決に尽力したのです。そのことがあったからこそ、満州事変が起こったとき、国際連盟は日本の立場にも配慮しましたし、最後まで連盟にとどまって欲しいのが本音でした。

 現在の安倍内閣は、積極的平和主義を掲げています。しかし、集団的自衛権の議論にしても、日本が戦争に参加するのかなどに問題が矮小化されてしまっています。今日の戦争は複雑ですし、日本が国際平和で果たす役割も古典的な戦争のイメージとは別のものが求められています。

 ですから、もっと世界平和のためにどう関わっていくのかというビジョンを明確にし、それを実現するために集団的自衛権を合憲化するというのであれば、理解が得られるかもしれません。他方で、アメリカやロシアにもっと積極的に核軍縮を進めたり、それに付随し、核開発をすすめている国へ開発を止めようと、核兵器の全体の保有量を減らすような行動をした方がいいのではないでしょうか。

――第1次大戦の戦勝国であるアメリカはその後、民主主義を世界に広める行動を取っているのが、今の状況に似ていますね。

井上:アメリカという国にさまざまな問題はあるとは思いますが、アメリカがリードする民主主義の理念は普遍的なものだと思います。民主制にも問題はありますが、これまで人類の考えたさまざまな政治制度の中ではもっともマシな制度なので。


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