2026年9月15日(火)

日本の農業論にモノ申す

2026年9月15日

コメ価格決定への影響力を失う農協概算金

 なぜなら農協系統は食料システム法に定められた「コメコスト指標」(生産コスト指標2万535円)もあって、8年産米の概算金をある程度維持しなくてはならなかったが、その価格は市中で取引されている新米価格よりはるかに高い価格になってしまったからだ。農協系統が生産者に示した概算金が実際に市中で取引される価格よりはるかに高いという状態になっている。

 具体例を示すと早場米産地の千葉県は、農協系統はコシヒカリの概算金1万8000円を示したが、市場で取引される価格は1万3000円から1万4000円である。これでは農協系統は集荷したコメを4000円から5000円損することになるが、農協系統の委託販売方式の共同計算はそれほど単純ではない。少しややこしくなるが、このことを理解しないと「米価(コメ相場)」の本質が見えて来ないので説明したい。

 千葉県の農協系統が生産者に示した26年産(令和8年産)米コシヒカリの概算金1万8000円は、あくまでも生産者が今年6月末まで出荷予約した数量に対して支払う額で、出荷予約していない生産者が農協に持ち込む場合は「予約外米」という扱いになり、その額は1万円、農協によっては5000円という額しか支払わないところもある。

 では、出荷予約した数量はどのくらいかというと3万トン(t)程度で、千葉県で生産されるコメの1割程度に過ぎない。大半のコメは生産者が直接商系集荷業者、卸など流通業者、さらには外食業者など実需に販売しているのであり、これが市中で取引される価格で、コシヒカリは1万3000円~1万4000円程度で取引されている。メディア等で「千葉の概算金1万8000円」と報じられると、それが今年の新米価格のように思われるかもしれないが、大半のコメはそれよりも大幅に安い価格で動いているのである。

 これは千葉県だけのことではなく、コメどころ新潟県や秋田県でも同じである。新潟県はコシヒカリの概算金を1万8500円、秋田県はあきたこまちを1万8300円にしたが、市中で取引されている価格はそれよりも大幅に安く、新潟コシヒカリで1万6000円程度、秋田あきたこまちは1万4000円程度である。

 つまり農協系統の概算金とはあくまでも農協系統の希望価格であり、実際に販売できるであろう価格ではないのである。全農系統の相対販売価格はあくまでも「建値」希望価格であることを理解しなくてはならない。

 過去、農協系統が全国で流通するコメの半分を扱っていた「自主流通米」制度時代は、全農系統の建値はコメの価格を左右する力があったが、現在では流通量の3分の1も扱っていないのであり、そうした力はなくなっている。

需給も価格も安定化できない改正食糧法

 コメ取引の実勢価格を知るには民間の仲介業者が行っている売り買い価格や成約価格を見れば良いのだが、これはその仲介業者の会員社にならないと見られない。一般には、コメ卸業界団体である全国米穀販売事業共済協同組合(全米販)の子会社クリスタルライスがホームページで一部の銘柄に限って成約価格の平均値を公表しているに過ぎない。

 クリスタルライスは定期的に取引会を開催しており、産地の集荷業者等から募った売り物をまとめて卸に提示して成約に結び付けている。参考までにコメ不足で価格が高騰し始めた昨年5月から今年8月までの取引会の数量や価格を示すと以下のようになっている。

 これで明らかなように、価格が高騰した昨年5月の加重平均価格は1俵(60キロ)4万7935円にもなったが、それが今年8月には1万4929円と3万3000円も下落している。まさに暴落という表現がぴったりだ。


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