トランプ大統領にとって、金正恩との首脳会談は、世間の関心を自分自身とイスラエルがイランに対して開始した、不人気で多額の費用を要する戦争から逸らし、第一期政権の際から大事にしている金正恩との指導者同士の個人的関係に向けさせることとなる。
米朝首脳会談のタイミングとして取り沙汰されているのは、11月に習主席が中国南部で開催する東アジア経済サミット(注:11月18日、19日に深圳で開催が予定されるAPEC首脳会議のこと)の場である。トランプ第一期政権の際と異なり、今回、金正恩は、トランプ大統領からのアプローチに何ら回答を示していない。金正恩の妹であるとともに側近でもある金与正は、米韓軍事演習の縮小は「挑発的で攻撃的な性格」を変えていないと述べた。
現在、北朝鮮にとって米国との関係を構築しなければならない必要性は低減している。経済は好調であり、中国・ロシアとの同盟関係を通じて外交的・軍事的立場は強化されている。
プーチン大統領の側近によれば、プーチン大統領は、11月にトランプ・習会談が行われる際に、これに加わる可能性もあるとのことであり、もしも、金正恩が加われば、歴史的な四者会談となる可能性もある。
一方、金正恩は2019年にハノイでの米朝首脳会談が失敗に終わった後、21年に政策変更を行い、それ以来、その方針を維持しているとの指摘もある。「北朝鮮の戦略的思考と政策は根本的に変化している。北朝鮮は米国との関係正常化を目指していない。金正恩は、今や世界を異なった仕方で見ており、自身を世界の反帝国主義勢力の指導者と見ている。金正恩にとって米国との対決は不可避であり、トランプのイランとの戦争はそうした考えをさらに強めた」と米国の北朝鮮専門家の一人は指摘している。
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好機ととらえる中国
トランプ大統領は本年8月頃から、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党総書記との会談を希望する姿勢を明確に示してきている。その背景として、イランでの苦境、金正恩への親近感、「平和を実現した」と喧伝したい思惑、北朝鮮への防衛上の対応を韓国に委ねていく政策的方向性、投資の機会によるビジネス・チャンスなどが念頭にあるのではないかと考えられる。11月中間選挙が近づく中、トランプ大統領としては、北朝鮮で得点を稼ぎたいと考えているのだろう。
一方の中国である。中国には、こうしたトランプの姿勢を好機と捉えていると考えられる。
北朝鮮の核問題への中国の姿勢は明確に変化した。2010年代後半までは、公式文書で「朝鮮半島の非核化」に言及していたが、このところ、非核化への言及は消えて、「国家主権、安全保障と発展上の利益を断固として守る」と北朝鮮の立場に即した表現が用いられている。
