中国側としては、トランプ大統領の前のめり姿勢を利して、米朝の間を取り持つことには、いくつかのメリットがある。第一に、自国がバイパスされた形で、米朝が話をまとめるシナリオを排除することができる。第二に、米国に対するカードとして使える。北朝鮮問題で米国の望む措置をとる見返りに、米国の台湾支援や対中制裁などでの譲歩を求める取引材料にできる。第三に、北朝鮮に「後ろ盾」となることで恩を売ることができる。第四に、北朝鮮がロシアだけに傾斜する事態を回避することができる。
金正恩はどう動くか
こうしたことからすれば、中国としては、北朝鮮と米国との間を取り持つ十分な動機があると考えられるが、北朝鮮がそれにどう対応するかは別問題である。
第一に、対米不信があろう。19年、ハノイで行われた第二回米朝首脳会談において、金正恩は一部の核施設の廃棄と引き換えに制裁解除を得ることを見込んでいたが、実現しなかった。これは、金正恩にとって屈辱的な痛恨事であったはずである。
また、米国のイランへの対応を見れば、米国は政権が代われば、前の政権がとった措置が簡単に覆される国であると捉えたはずである。米国との取引には慎重にならざるを得ない。
第二に、中国に対する警戒心もあろう。前記の中国側にとってのメリットは、自分のことは自分で決めたい北朝鮮からすれば、中国が「口出し」してくることに他ならず、必ずしも歓迎できることではない。
ロシア・ウクライナ戦争への参戦で、ロシアとの関係を強めている北朝鮮にとって、従来以上に、行動の選択肢は広がっている。米中が米朝首脳会談による取引を望んだとしても、北朝鮮がその通りに行動する保証はないと考えられる。
9月24日に米中首脳会談において、この問題についてどのような具体的なやりとりがなされたのかについては、確度の高い情報は表に出てきていない。貿易猶予の2カ月延長やAIに関する対話枠組みの協議といった問題の影に隠れて、新たな進展はなかったとの見方もあるが、表に出てきていないことだけでそうと判断するわけにも行かない。11月に向けての動きを引き続き注視すべきであろう。
