情報の公開の仕方も奇妙だ。盗取した情報は、ファイル名の一覧やファイル毎にその一部のデータを開示して自分が真正の攻撃者だということをアピールするのが常套手段だからだ。
筆者には、たまたまAIを使ってハッキングしてみたら見事に成功し、その興奮から覚めやらぬ間に身代金を要求し、脅迫に応じないとわかると「ちょっと要求額が多すぎたのか」と減額し、世間の耳目を集めるため情報公開用の個人情報を作ってみましたという承認欲求が強い若者が起こした騒ぎに見える。
人質にとったGMOの顧客の情報を毎日1件ずつ公開するという長期戦を覚悟した作戦も理解しにくいもので、この手の犯罪は時間をかければかけるほど捜査の手が回ることになる。攻撃者が特定され逮捕されるのも時間の問題という見方もできる。
異常に早いドメイン停止までの時間
いずれにせよGMOにとっては、ひと段落ついたといったところかもしれない。
今回の事件で目を引いたのはドメイン停止までの時間が異常に早かったことだろう。漏洩した情報が公開されてから16時間でドメインが停止されるのは極めて異例な速さだ。通常なら数日から数週間、場合によっては数ヶ月かかるのが一般的だ。
攻撃者があえて誰でも見ることのできる通常のインターネット上にサイトが構築されたことが一番の要因だが、警視庁と米国の連邦捜査局(FBI)などの法執行機関との連携がうまくいったことの証だろう。ダークウェブ上にサイトが作られた場合は、強制的にサイトを封鎖するのは不可能に近い。
GMOにとっては、不幸中の幸だったといえる。
ドメイン停止で一件落着か
ドメインを停止すれば解決なら、すべての事案に対してドメイン停止要請を行えばいいのではないかとの考えがよぎるが、攻撃者が本物のプロだった場合はそうはいかない。はじめからダークウェブ上にサイトを構築するか、ドメイン停止要求に応じないサーバーにサイトを構築するのが通常だからだ。ダークウェブ以外にも世界にはドメイン停止要求に応じないサーバーが無数に存在している。
防弾ホスティング(Bulletproof Hosting)サービスと呼ばれるのがそれだ。防弾サーバーが存在している国は、中国とロシアをはじめとする旧ソ連圏の国々(ウクライナ、モルドバ、ルーマニア、ブルガリアなど)や、プライバシー保護に熱心なオランダ、スウェーデン、スイス、アイスランドなどがある。
とりわけオランダは防弾サーバーが最も多く存在する国の一つで、大手の防弾ホスティング業者が複数活動している。無料でサーバーの開設・維持できるダークウェブと違いこちらは有料だが、それでも月額数千円から数万円で完全に身元を隠せる防弾サーバーを使用した方が犯罪者にとっては安心なはずだ。
