2022年12月2日(金)

サイバー空間の権力論

2014年9月22日

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塚越健司 (つかごし・けんじ)

拓殖大学非常勤講師

1984年生。専攻は情報社会学、社会哲学。著書に『ハクティビズムとは何か』(ソフトバンク新書)、共編著に『「統治」を創造する』(春秋社)、など。TBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』火曜ニュースクリップ担当としてレギュラー出演中(http://www.tbsradio.jp/dc/)。

 このように、IoTはインターネットがそうだったように、魅力的であるにもかかわらずセキュリティ問題が大いに懸念されていることを軽視してはならない。なぜなら、家電は高齢者をはじめとしたあらゆる人々が利用するからだ。わからなければ使わなければいい、というパソコンとは異なり、各自がセキュリティに対する意識を持たなければならないか、あるいは個々人のセキュリティに対するサポート体制を確立しなければ、IoTという産業そのものの発展を妨げる要因にもなってしまうだろう。

IoTは産業構造を変えるのか
産業における「創造性」とは

 ところで、本稿はIoTを通して「創造性」について考察することにその目的があった。最後にこの点に言及しよう。

 確かにIoTは新しい「産業」としては期待されている。農耕革命、工業革命、そしてインターネットに象徴される現在の情報革命の、その最先端の現象だ。IoTは製造業やより広範な工業業界と情報産業をより接近させるため、様々な業界に対立よりも協調を促すだろう(その点、製造業に打撃を与えるとも言われている3Dプリンターとも異なる)。とすれば、新しい技術であるIoT化を促進することは、先進各国、特に一から創出するよりも既存の技術の組み合わせが得意な日本にとっては、とりわけ魅力的な産業ではないだろうか。

 とはいえ、だ。IoTそのものは、発想としては既存のモノとインターネットを組み合わせたものであり、その限りにおいてまったく新しい商品や概念というわけではない。極端に言えば、ipodやiPhoneにしても、それ以前に存在したウォークマンや携帯電話を洗練させたものと言える。

 何もこれは工業産業だけの現象ではない。完全なオリジナリティは存在しないという意識は、日本をはじめとする先進各国で、とりわけ80年代の消費社会化と平行して生じた。それ故に、80年代は過去にあったオリジナルとの差異やオリジナルをリミックスすることで、当のオリジナル文化に対抗しようとしてきた。80年代に流行したカーディガンを肩にかけた通称「プロデューサー巻」が現在リバイバルしているように、ファッションは数十年単位で流行が繰り返される。

 無論、「創造性」がある、という基準もまた人によって異なることから、「創造性」を客観的に測定することは不可能だ。コピー文化が新しい文化を生んだという主張も間違いではない。しかし創造性とは、現在を生きる我々が「創造的だ」と思えるかどうかに掛かっているとしか言いようがない(ここでは我々の定義まで細かく言及しない)。

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