2022年9月26日(月)

ヒットメーカーの舞台裏

2015年3月4日

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池原照雄 (いけはら・てるお)

ジャーナリスト

1950年生まれ。専門紙や全国紙の経済記者として自動車、エネルギー、金融、官庁などを担当。00年からフリーになり幅広い執筆、講演活動を展開。著書に「トヨタVSホンダ」(日刊工業新聞社)、「図解雑学 自動車業界のしくみ」(ナツメ社)など。

 男性が立ったまま用を足すと、便器内で跳ねた小便が拡散してあちこちに付着しやすいし、便器から外に漏れ落ちたりもする。一方、座った状態の用足しでは便座の裏や便器のフチを汚しやすい。トリプルガードは、こうした小便の汚れに対処して「ハネ」「タレ」「モレ」を防ぐという3つの機能をもたせた。

酒井武之(Takeyuki Sakai)(エコソリューションズ社 洗面トイレ商品企画チーム チームリーダー)1973年生まれ。96年東京工業大学有機材料工学科卒、松下電工(現パナソニック)入社。 同年からトイレの商品企画に従事し、その後3年間の営業や工場での生産管理などげんばでの経験も積んだ。現在は海外市場開拓の任も兼ねており、「アジアなど海外諸国にも日本の清潔なトイレを普及させたい」

 「ハネ」は男性の立位の小便対策であり、便座を上げるとセンサーで便器内の水位を3センチほど下げ、同時に洗剤の泡を水面に供給する。低い水位と泡のクッションで跳ねを抑止する。また「タレ」と「モレ」は便器上部のフチ周りに付着した小便が垂れたり、外に漏れたりしないよう、便器や便座の形状を徹底追求した。これらのガード機能の設計で最も工数を要したのは「機能を検証すること」(酒井)だった。このため、小便の量や勢いなどを高精度で再現できる模擬装置を製作し、これが威力を発揮した。

 この製品のリフォーム向けが好調なのは家電を扱うパナソニック販売店の貢献度が高いからだ。酒井は開発に当たり1週間ほど全国の販売店を廻り、店主らの声を聴いた。松下幸之助の著書に、顧客のことを「一番良く知っているのは販売店さんの熱心な方である」という一節があり、実践したのだ。

 とりわけ高齢者が使いやすい製品に仕上げるうえで、有効な助言を得た。もともと住宅設備部門は、家電主体の販売店とは接点が希薄だった。そのカラを破った酒井の行動力が光っている。(敬称略)

  
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◆Wedge2015年2月号より

 

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