世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年3月10日

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 こうした挫折のために、ISは士気を維持し、戦士参入の流れを確保しようと、ますます残忍な行動に走るのかもしれない。専門家は、そこにチャンスがあり、特に、帰国した戦士が待遇の酷さを語るビデオが必要である、と指摘する。長期戦では、銃や戦闘機だけでなく、包括的戦略や忍耐強く知恵比べをしていくことも必要だ、と報じています。

出典:‘It will be a long haul’(Economist, February 7-13, 2015)
http://www.economist.com/news/middle-east-and-africa/21642243-fight-against-islamic-state-making-some-progress-jihadists-are

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 この記事は「イスラム国(IS)」との戦いの現況を正確に描写しています。先行きへの楽観論を抑える調子で書かれていますが、内容的には最近ISが有志連合により押し戻されつつある事象を紹介しています。

 ISによるヨルダン人パイロットの処刑、それも生きたまま焼殺したという行為、コバニからの敗退、キルクーク進出の失敗、モスル周辺での後退などの諸要因を総合的に見れば、ISの勢力拡大には歯止めがかかり、その減退が始まったと考えられます。潮目が変わったと言ってよいかもしれません。

 第一に、ヨルダンはパイロット処刑への復讐として国民の強い支持のもと、ISへの爆撃を大規模に強化しています。アラブ首長国連邦もIS空爆に再参加しています。アラブ・スンニ派諸国が真剣にIS攻撃に取り組むに至っています。

 日本の新聞では、「見えない敵、IS」などの見出しがよくみられますが、ISは領域を支配している「見える敵」です。アルカイダは各地に秘密の細胞を持つネットワーク型の組織で、まさに見えない敵であり、それを見えるようにする情報活動が必要でした。しかし、ISはラッカに拠点を置く国家類似の組織です。その分、攻撃しやすく、支配領域を縮小させることができます。それでも秘密細胞などは残るのではないか、という人もいるでしょう。確かに、それはその通りで、テロ組織を根絶することは不可能に近いのですが、領域支配型テロ組織を秘密細胞ネットワーク型に抑え込むことができれば、それは大成果です。

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