ダライラマと会うことで米国は中国を刺激することになる。中国とは話し合うべき多くの事柄がある。しかし、地政学上、道徳上、会うべき理由は多い。ほとんどのアメリカ人にとり、一つの理由で十分である。それは、いかなる状況でも米国は、米国が誰と話すか話さないかを他国が決めることを許さないということである、と述べています。
出典:Jeff M. Smith,‘America’s Dalai Lama Dilemma’(Wall Street Journal, February 12, 2015)
http://www.wsj.com/articles/jeff-m-smith-americas-dalai-lama-dilemma-1423764128
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今回、オバマがダライラマに会ったのは宗教的行事の一環でしたが、いずれにせよ良いことです。
経済的利益や外交上の利益など、対中配慮の必要性を云々し、大統領とダライラマの面会に慎重論を唱える声もありますが、スミスは、「他の国が大統領が誰に会うかについて口出しすることは許さないということで対処すべきであり、その理由だけで十分である」としています。この考え方には賛成できます。
中国は、香港のことを例にとっても、他国に対し内政干渉は断固拒否する姿勢をとる一方、ダライラマに会うのは中国人の気持ちを傷つける、分離主義者支援にあたるなどの理由をつけて、ダライラマに会わないよう干渉します。これは、二重基準と言うべきです。それを執拗に繰り返してくるので、ダライラマと各国首脳との会見回数は、この記事にあるように減ってきています。中国は各国に脅しに近いことを言って、各個撃破してきています。
この中国のやり方は、他の問題への波及もあるので、放置すべきではないように思います。具体的には、G7でこの問題を取り上げ、各国首脳の合意として、ダライラマとは今後とも面会すると決めればよいのではないでしょうか。中国に各個撃破させないこと、一か国で不利益を考えて悩むことがないようにするのです。そうすれば、ここでいうディレンマの解決になるでしょう。
チベット問題は植民地支配、文化侵略の問題ですが、この問題は、中国自体が民主化される中でしか解決されないように思われます。中国指導部が決断すれば一国二制度的解決は可能でしょうが、今はそういう可能性はありません。チベット問題を解決するため、ひいては中国の民主化推進のためには、ダライラマの主張の正統制を認めるべきで、チベットの神政政治の改革はチベット人自身に任せるのが良いと思います。
なお、チベット亡命政権はインドにあります。したがって、対インド関係でもこの問題は重要です。
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