2024年11月22日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2015年3月13日

統合作戦司令部の設置を目指す

 統合は、海軍だけでなく、人民解放軍全体の目標である。そもそも、人民解放軍には、統合運用するための統合作戦司令部が存在しない。各軍種と各軍区がそれぞれに部隊を運用しているのだ。

 統合作戦司令部の設置が話題になったのは2013年である。同年11月に開催された中国共産党18期三中全会の公報が、「軍隊体制編制の調整改革を深化させなければならない」と指示した。この指示が意味するのが、統合作戦司令部の設立であると考えられる。同じ会議の中央委員会全体会議が、「異なる地域及び異なる軍種間の協調を強化しなければならない」と指示したからだ。2014年1月には、中国国防部が、「適切な時期に統合作戦司令部を設置する」と明言した。すでにおおまかな機構は出来上がっていると聞く。

 こうした流れを受けて、中国海軍も、三大艦隊(北海、東海、南海艦隊)間の統合を進めているのだ。これまで、三つの艦隊の運用はバラバラだった。2010年3月に実施された海軍演習は、このことを裏付けている。この演習は、青島を拠点とする北海艦隊の、駆逐艦1隻、フリゲート艦3隻など6隻からなる艦隊が南シナ海まで展開して実施したものだ。

 中国メディアは、この演習の新しい特徴の一つとして、「統一的な指揮」を挙げている。中国の報道によれば、北海艦隊の艦隊は、その行程で、三大艦隊の五大兵種(航空兵、水上艦艇、潜水艦、対艦ミサイル団、電子対抗部隊)と対抗演習を行ったが、それを可能とするために、海軍司令部から三大艦隊の指揮所および各部隊の指揮所に至る立体的な大規模指揮ネットワークが構築されたという。この表現は、それまで、「海軍全体をカバーする指揮システムが存在しなかった」、「北京に所在する海軍司令部には三個艦隊を指揮する手段がなかった」ことを示唆している。

中国海軍の統合と機動化は連動している。中国海軍には、三大艦隊を廃して、「両海艦隊」という二個艦隊編成にするという話がある。2つの艦隊を、中国本土からの距離によって区分するという。「近海艦隊」と「遠海艦隊」だ。この2個艦隊は、近海防御を担う「地方艦隊」と世界各地に展開する「機動艦隊」という意味でもある。実際の編成が2個になるかどうかは別としても、近年、中国海軍が進める水上艦艇の装備の状況は、近海と外洋における運用の二分化という発想を裏付けるものだ。空母及び大型駆逐艦の建造と、小型のコルベット等の大量建造の二分化である。2025年には、中国近海防御を主としてコルベット等が担う一方、地中海で中国空母艦隊の姿が頻繁に見かけられることになるだろう。


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