大きくしてから獲るシステムであれば、安く販売する小型が減るので、水揚げされた魚の平均魚価が上がる一方で、大きな魚でもそれほど高くない価格に設定でき、消費が伸びるのです。魚が大きければ、買手も原料買付の選択肢の幅を増やせることになります。小型の魚まで争って獲ってしまうのは漁業者が悪いのではなく、個別管理制度が整っていないという、制度の問題です。
養殖には餌が必要です。ノルウェーのアトランティックサーモンの養殖では、あまり食用にならず、魚が大きくなっても価値が上がらないイカナゴやサッパ等の魚や、ニシンなどをフィレー加工した残りの骨や内臓などがフィッシュミールにされて餌として使用されています。ノルウェーでサバの一部がフィッシュミールに使われていたのは1990年の前半、20年以上前の話で、今では99%が価格の高い食用になっています。
通関統計によると、ノルウェーから日本に輸入されているサバの単価は2014年・2013年ともキロ約200円、これに対して、日本から海外に輸出されているサバの価格は、2014年でキロ109円、2013年でキロ106円となっています。サイズが小さいものや脂がのっていないものまで輸出しているため、日本のサバを輸入する国々にとって日本のサバは、単に「価格が安いサバ」という位置づけに過ぎません。輸出にも回せない餌用のサバの価格はさらに低くなります。
赤ちゃんサバは獲らずに大きくしてから旬の時期にだけ獲れば、成長して産卵するチャンスが出来ます。それをノルウェーのように個別割当方式で船ごとに漁獲枠を決めるシステムを適用すれば、漁船は自然と価格が高い旬の時期に魚を狙うようになるのです。そして消費者は美味しいサバを食べることで消費が増えていくという好循環が生まれます。逆に、脂がのっていない時期のサバを食べれば、固くて不味いとトラウマになり、魚離れが進んでしまう一因にもなってしまいます。筆者は魚離れが進んでいる要因の一つに、個別割当制度になっていないがために、ノルウェー等と異なり、「旬」でない時期の魚を消費者に供給してしまう問題があると考えています。日本のサバ輸出についても、漁船ごとに厳格に個別割当制度が実施されれば、小型のサバの漁獲は、漁獲枠の消化が惜しくなるので、ノルウェー同様に避けるようになるでしょう。