2024年4月25日(木)

対談

2015年4月9日

久松:農薬も使うにしても健全な功利主義が必要で、僕は自分では農薬を使わないけど、農薬を上手に使う人が大好きです。畑にいても、頭のなかでは「もし農薬を使うとしたら」と仮想シミュレーションしています。制約条件のなかでどうやったら最小の使用で最適な効果を得られるか、あくまでも脳内ゲームですけどそれができるということは、栽培技術としての段取りができているということでもある。数学的な美しさが好きなんです。

 僕の尺度は自分の畑にとって、あるいは自分にとってどうかということだけで、世の中全体の「環境」についてはほとんど考えていません。ただ、そういう功利主義的なエコを追求している人が多い地域のほうが、地域全体の環境もうまく保たれているはずだよね、とは思います。

丸山:環境負荷は捉え方が難しいんですけど、究極の負荷はエネルギー収支の赤字です。農業でいえば、栽培に投じられるエネルギーの総量と、それで得られる作物のエネルギーが均衡しているかどうかなんです。消費する量を抑えることでも均衡に近づけられるし、エネルギーの供給源を再生可能なものにすることにも解がある。

 生物多様性という意味では有機は慣行農法よりも圧倒的に優位ですけど、エネルギー収支でいえばそんなに変わらない。産出エネルギーと投入エネルギーの比率でいえば、1950年代で1.1対1くらい。その後は石油依存が増大して、0.6から0.4くらいまで落ちてしまっています。カロリーの高いコメでさえそうなんだから、野菜なんか作っていたらエネルギー収支では「負け」なんです。エネルギー収支も含めて環境負荷が低いといえるのは粗放的にやっている自然農法くらいで、やはり機械化の影響が大きいですね。

久松:石油使用量ですよね。それはその通りです。

丸山:一方で、農業には小口のエネルギー需要が大きくて、再生可能エネルギーで代替できるんじゃないかなと思う要素も多いです。たとえば水田に水を張るときに井戸を掘って太陽光発電のポンプで汲み上げるとか、そんな余地はありそうに思えます。いまのエネルギーの使い方は、大排気量の車に乗って近所のコンビニに行くようなもったいなさがある。経営面で見ても環境負荷で見ても、もっと合理化できそうな気がします。


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