対談

2015年4月9日

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――「環境負荷」と聞いてすぐに多くの人が思い浮かべる問題は、エネルギー収支ではないですよね。

丸山:そう理解されてはいないですね。

久松:より重要なのはそっちだということですね。丸山先生はエネルギーの専門家でもあるから、いつも聞かれるのは「どれくらい軽油を買っているのか?」とか、そういう話ばかりなんです。実際にエネルギー消費量を抑えた栽培を論理的に考え、経営合理性も追求するようなことをやっている知り合いもいて、面白いし、羨ましいですね。美しい。やるとしたら老後だな(笑)。僕らはもし日本に石油が入ってこなくなったら、家族も従業員も食べさせられない。

丸山:動物をもっとうまく使えたら面白いかな。農耕馬が復活したら素敵ですよね。

久松:そりゃあまあ、素敵は素敵ですけど(笑)。

丸山:都市交通の環境負荷対策は、どうしてもエコカーになってしまうけど、ダチョウが走っていたら楽しいじゃないかとか(笑)。たぶん維持するのは大変なんだけど、そっちのほうが環境負荷だけじゃなく、付加価値も高いような気がするんですよね。

久松:エネルギーの話に比べると、非専門家の粗さが出ますよね(笑)。

丸山:喩え話にいちいちダメ出ししないように(笑)。

植物工場は農業の理想型?

久松:この前丸山先生と一緒に、ある植物工場を見学してきたんです。植物工場を進めている側の事業者や研究者にも、安全性こそが最大の売りだと考えている人たちがいるんだとわかりました。慣行農業の危険性をあまりに訴えすぎた帰結がこうなるんだという例で、彼らは安全性に真正面から向き合っていて、皮肉や諧謔で「安全です」と言っているのではなかった。

丸山:慣行農業の究極の進化形のひとつが植物工場ですね。すべてを制御し、駆除ではなく閉鎖空間という完璧な防除で対応する。「どちらが安全か」の相対比較で勝負している限りは、従来の有機も慣行も早晩勝てなくなってしまうと思いますね。

久松:栽培過程や施設のひとつひとつのパーツは決して高度なものではなくて、設備投資の大きさがほかの農場とは違うだけ。集積で初期コストを回収できさえすれば、安全で競争する限りは、いつかはみんな植物工場に飲み込まれてしまうでしょう。

丸山:少なくとも漁業では「工場」が実用に近づきつつあって、ノルウェーなどでは閉鎖系の完全養殖が、しかも沿岸ではなく内陸で実用化されています。「野生の川魚を食べるなんて、なんでそんな危険なことをするんだ?」という感覚が彼らにはあります。閉鎖系であれば栄養のコントロールもできるから環境汚染もないし、寄生虫の心配もない。なぜそうしないんだ? というわけです。農業でも同じことが起こりうるんですよ。

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