対談

2015年4月9日

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久松:現時点では不完全なんですよ。よくできてはいるけど、グッとくるようなイノベーションはなかった。

丸山:ないですね。

久松:DNAレベルで解析して、実作業は非熟練労働者だけでやって、というところまで徹底されればある種の感慨はあるかも知れないけど。もう土耕なんか勝てないじゃん、みたいなものを見せつけられれば、ね。

丸山:たぶん今のところは要素技術を合体させただけですね。そもそも論で考えれば24時間人工光を照射するより、自然光を鏡で集約したりといった組み合わせを考えたほうが、コスト面でも最適解があるはずなんです。でもまだそういう作り込みをやっていない。蛍光灯で照射して、それでは熱が発生するから空調で制御するとか、論理的にも無駄の多いことをやっている印象です。

久松:でも、彼らは「やりたい」んだよね。プラモデル少年の世界なんだよね。

丸山:うん、日本人の自然観の極かも知れない。箱庭ですね。日本人と自然は親和性が高いというのは少し誇張があって、西洋人が憧れた東洋を引き継いでしまっている面がある。いいとこ取りした美しいモデルを手元で飼い慣らす。植物工場には箱庭的な「自然」を感じます。

久松:美しき閉鎖系を好むというところはあるのかも知れないですね。結局、有機農業そのもの良さは「合理性では語り尽くせない良さ」、その程度のものなんですよ。それなのに理屈の土俵に上がってしまうと、植物工場に対する優位性を失うということを、有機農家は思い知らないといけない。

丸山:そうですね。

久松:ハイコンテクストのものって、「これは××である」と簡単に定義できたら負けなんだと思います。「いいと思う人」がいて、その横にいる「いいと思わない人」には何が良いのかさっぱり理解できない。価格競争しないモデルがもっとも強くなるのは、そんな状況なんです。「久松さんの野菜はどこがいいんですか?」と聞かれて簡単に答えてしまったらもうダメで、「なんて無粋な質問をするんですか」と逃げるに限る(笑)。しょせん僕は有機農家を代表していないですからね、「お前は邪道だろ」と怒られる側ですから気楽です。

第3回へ続く

久松達央(ひさまつ・たつおう)
(株)久松農園 代表取締役。1970年茨城県生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、帝人(株)入社。1998年農業研修を経て、独立就農。現在は7名のスタッフと共に年 間50品目以上の旬の有機野菜を栽培し、契約消費者と都内の飲食店に直接販売。SNSの活用や、栽培管理にクラウドを採り入れる様子は最新刊の『小さくて強い農業をつくる』(晶文社)に詳しい。自治体や小売店と連携し、補助金に頼らないで生き残れる小規模独立型の農業者の育成に力を入れている。他の著書に『キレイゴトぬきの農業論』(新潮新書)がある。

丸山康司(まるやま・やすし)
名古屋大学大学院環境学研究科教授。専門は環境社会学、環境倫理、科学技術社会論。環境保全に伴う利害の齟齬や合意形成に関する研究テーマに関わっている。最新の著書は『再生可能エネルギーの社会化 社会的受容から問いなおす』(有斐閣)、共著多数。

取材協力:オークビレッジ柏の葉
都市に暮らす人たちに「食と農」のつながりを実感できる場所を提供するというコンセプトのもと、つくばエクスプレス柏の葉キャンパス駅の目の前という立地 で、体験型貸農園とレストランを展開。農園ウエディングやカルチャー教室から企業研修まで、開催されるイベントは多岐にわたる。農園のすぐ横で季節感に富 んだ食材を楽しめるバーベキューも好評。
http://www.ov-k.jp

  
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