日本政府は、地方創生を重要な政治課題として掲げている。では、なぜ、絶滅危惧種を産卵場で一網打尽にしている現状を放置しておくのか。このままではクロマグロに依存している沿岸漁業者は遠からず失業し、地方創生どころか漁村消滅である。
石破茂地方創生担当大臣は「漁業は資源管理のやり方を改めれば、いくらでも伸びる」という見解を示している。自民党水産部会では、わが国の水産資源のあり方を検討する「資源管理ワーキングチーム(WT)」(浜田靖一座長)を立ち上げて、漁獲規制に関する議論を行っている。水産WTでは、クロマグロについての議論を予定している。このような喫緊の課題こそ政治の出番である。リーダーシップを発揮してほしい。
今年が資源回復のラストチャンス
クロマグロは成長が早く、天敵が少ないことから、漁業の規制をしっかりやれば比較的早く回復すると考えられている。北大西洋に生息する大西洋クロマグロは、乱獲によって資源が激減したことから、絶滅危惧種に指定され、09年にはワシントン条約で規制をするかどうかが議論された。その後、EU主導で厳しい漁獲規制をしたところ、資源が急速に回復している。
壱岐の一本釣り漁業者は、「今年、産卵場を巻かれたら日本海のクロマグロはいなくなる」と危機感を強めている。産卵群を完全に潰してしまうと、その後何十年禁漁してもその産卵群は元に戻らないという事例が世界中で知られている。今年が漁獲規制によって、日本海のクロマグロを回復させるラストチャンスだろう。
日本が、漁獲規制でクロマグロを回復させた国になるのか。それとも、産卵群を一網打尽にしてクロマグロを潰した国になるのか。それは6月から始まる産卵場の操業を、政治主導で止めるかどうかにかかっている。
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