2022年12月5日(月)

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2015年4月28日

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勝川俊雄 (かつかわ・としお)

東京海洋大学准教授

1995年東京大学農学部水産学科卒。97年同大学大学院農学生命科学研究科修士課程修了。2002年同大学大学院農学生命科学研究科博士号取得(論文博士)。三重大学生物資源学部准教授等を経て15年4月より現職。

 04年から、日本海の産卵場に集まってきた産卵群を、巻き網が一網打尽にするようになった。それ以降、日本周辺でのクロマグロ成魚の漁獲量が減少している。親魚が集まる産卵場で集中漁獲をした結果、長年蓄えられてきた産卵親魚をあっという間に切り崩してしまったのだ。日本海の産卵場付近の長崎県壱岐市勝本町漁協は、質が良いマグロの産地として有名だが、近年は水揚げが直線的に減少している。

 日本のクロマグロ(成魚)の水揚げは、産卵期に集中している。資源が減少したことによって、産卵期以外は、クロマグロがほとんど漁獲できなくなったのだ。産卵期のクロマグロは、栄養を卵に吸い取られているので、身から脂が抜けており、1年で最も市場の評価が低い。冬場の1/3程度の値段しかつかないのだが、大量に水揚げをすることで、短期的な利益を出すことができる。

 産卵場での集中漁獲の結果として、産まれてくる稚魚の数が急速に減少している。クロマグロの産卵群が水面まで浮上して産卵をすると、サッカーコートぐらいの面積の海面が卵で真っ白になる。かつては、壱岐周辺でクロマグロの産卵を1日に何カ所もみることができたのだが、巻き網が産卵場で操業を開始してから激減している。毎日、海に出ている釣り船の船長も「クロマグロの産卵は08年頃から急激に減って、過去3年は一度も見ていない」と口をそろえる。このままでは、クロマグロ資源は壊滅的な打撃を被り、沿岸のクロマグロ漁業は成り立たなくなるだろう。

 壱岐のマグロ一本釣り漁業者は「マグロが釣れれば生活できるので、補助金などいらないから、漁獲規制をして資源回復をして欲しい」と訴えている。彼らは、少なくなった親魚を守るために、今年から産卵期にはマグロ釣りを禁漁にする予定である。このような取り組みも、大型巻き網船が産卵場での操業を続ければ焼け石に水だ。大型巻き網漁業は、一本釣りで有名な大間の1年分以上のマグロを、1日で水揚げする。

 これまでは、クロマグロの漁獲規制はほとんど存在せず、大型巻き網、一本釣り、延縄、定置網など多くの漁業が、1年中好きなだけ獲ることができた。14年に絶滅危惧種に指定されたことを受けて、漁獲規制をするための取り組みが始まっている。30キログラム未満の未成魚については02~04年の平均漁獲量の半分を上限とする漁獲枠が導入された。

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