2024年6月16日(日)

田部康喜のTV読本

2015年6月10日

 自宅の要所に監視カメラをつけるが、その位置を知っているのは間違いなく、ストーカーは姿を隠すようにして家に忍び寄る。

 フリーライターの明日香(沢尻エリカ)は、しだいに倉田家に溶け込んで、「健太の嫁」と親しみを込めて呼ばれるようになる。

 沢尻エリカは、映画「パッチギ」(井筒和幸監督・2005年公開)の在日の美少女役で、数々の賞を獲得して将来を嘱望された女優である。最近では、天才漫画家といわれる岡崎京子原作の映画化「ヘルタースケルター」(蜷川実花監督・2012年公開)、ドラマでもフジテレビの昨年の「ファーストクラス」では、ファッション雑誌の編集者・デザイナー役がみせた。日本を代表する若手女優のひとりといってもよいだろう。

 ニット帽の男は誰なのか。ドラマは終盤に至ってもそのヒントすらわからない。最終幕のどんでん返しが待っているのだろうか。

音のない世界で繰り広げられるサスペンス

 「ようこそ」をここまで観続けてきたのは、「恐怖」というものが「日常」とほとんど紙一重であることを、このドラマが綴っているからである。

 沢尻エリカの語りは、けっして恐怖にひきつったり、大きな声をあげたりはしない。

 事件記者だった時代のことを思えば、事件とはそういうものである。河川が大雨で大氾濫して孤立した町に、首の近くまで水につかって近づくと、そこはしーんとして音のない世界のようだった。暴走族が衝突事故で何人も亡くなった現場に、彼らの死体が散乱していたときもそうだ。

 健太と妹の七菜が、ストーカーが自宅に侵入するのを、暗闇のなかで待つ。七菜のスマートフォンのかすかな光が、犯人にふたりの存在を気づかせる。七菜をかばおうとして、犯人ともみ合っているうちに健太はナイフで刺される。

 音のない世界で繰り広げられるサスペンス。上等なサスペンスは、観る人があるときは被害者の立場になり、そしてあるときは犯人の側から観る。ヒッチコック監督が映画づくりの必須の要素として語っていたことである。


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