「ファミリー・サスペンス」という
新しいジャンルの開拓
「ようこそ」は、ニット帽のストーカーの行為に、倉田家の人々に対する愛憎による事件がからみあう。
母親の珪子が、陶芸教室の仲間の家に空き巣に入った疑惑は、同じ教室に通う下村民子(堀内敬子)が仕組んだものだった。民子は金持ちのセレブマダム風であるが、家庭は壊れている。裕福とは言えない暮らしのなかで、幸せに暮らす珪子に憎しみを抱いていた。
盗聴マニアの陶芸教室の指導者を脅かして、仲間の家の空き巣事件を珪子の仕業にでっち上げたのだった。
そのことがばれそうになって、民子は珪子の家に乗り込んで、部屋に灯油をまいてライターに火をつける。かけつけた健太と珪子に、民子は叫ぶ。
「どうしてあなたの家は壊れないのよ」と。
ヒッチコック監督の最後の作品は「ファミリー・プロット」。ある家族の遺産をめぐるサスペンスである。
それにならっていうならば、「ようこそ」は、「ファミリー・サスペンス」という新しいジャンルの開拓といっていいのではないだろうか。謎を解くのは、どうやら明日香(沢尻エリカ)のようである。
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