世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年7月9日

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 そのうえ、米国と同盟国は、脆弱な国々で十分な支援をしなかった。リビアでは米、英、仏はカダフィの転覆に手を貸したが、それに続くしっかりした政府の樹立に十分協力しなかった。リビアでは官僚機構が崩壊し、十分武装した民兵が地方の多くを支配し、ISや他の聖戦グループが真空状態につけ込んだ。

 IS版イスラムは地域になじまないなどの問題はあるものの、ISはイラク、シリア以外での作戦を拡大し、パリ、オタワ、ブリュッセル、コペンハーゲンなどでのテロ活動に、直接、間接に結びついている。

 米国の対応が成功するためには、イラク、シリア以外でISに対峙しなければならない。まずISの拡大を正確に診断し、その上で国際パートナーと協力して、リビアのような危険にさらされた国でISの思想を攻撃し、収入源を絶ち、主要な指導者を狙い、地域の政府を支援すべきである。そうしなければISはさらに勝利するであろう、と論じています。

出典:Seth G. Jones,‘Islamic State’s Global Expansion’(Wall Street Journal, June 4, 2015)
http://www.wsj.com/articles/islamic-states-global-expansion-1433459574

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 ISの勢力が拡大していることは疑いありません。いま、ISの戦闘員は3万人で、そのうち2万人が外国人戦闘員であると言われています。多いところではチュニジアが3000人、サウジアラビアが2500人、ヨルダンが2080人と言われていますが、西欧の国も、フランス700人、英国400人、ドイツ270人などとなっています。ISが人を引き付ける力は、依然衰えていません。

 論説は、米国の対応が成功するためには、イラク、シリア以外でISに対峙しなければならない、と言っていますが、カギはやはりイラク、シリアでしょう。

 最近ISがラマディ、パルミラを制圧したことが、ISを勢いづけています。バグダッドは死守しなければなりません。

 イラク、シリアでISを押し戻すためには、空爆だけでは不十分で、地上軍が不可欠です。しかし、米国は地上軍は送れません。そうすると、頼れるのはシリアでは、IS以外の反政府勢力で、米国等は、これら勢力を支援する必要があります。イラクでは、イラク国軍が弱体なので、シーア派民兵、ペシュメルガに頼ることになりますが、シーア派民兵については、スンニ派住民の反発が予想され、ペシュメルガについては、イラク政府がクルド自治区の独立につながりかねないとしてあまり乗り気ではありません。スンニ派の部族を支援すべきであるとの見解もありますが、どこまでスンニ派部族がシーア派の中央政府に協力するか、定かではありません。

 要するに、イラク、シリアでISに対抗する有効な地上軍は少なく、ISを早急に封じ込めることは困難ではないかと思われます。

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