Q:今後も市販のウナギ蒲焼きのDNA検査を続けるのでしょうか。
――はい。今後も続けていくつもりです。ウナギって、水産資源をどう適正に消費するかを考えるうえで、最も適した材料だと思うんです。以前はすし屋も時価が普通でしたよね。魚は漁獲量が増えたり減ったりする生き物です。なのに、いつ行っても同じ値段で食べられることが果たして正しい食べ方なのか。資源が特に問題視されていないものは別ですが、ウナギという限られた資源で大量消費を続けることが正しいのか。
ウナギの完全養殖がうまくいって、好きなときに好きなだけ作れるようになったら人間の技術の勝利なので、安く、美味しくウナギを食べていいわけですけど、まだ完全養殖が事業レベルまで達していなくって、人間って動物の持つ力はそこまで達していないわけですよね。なのに第二、第三、第四のウナギを持ってきて食べようというのは、消費行動としては愚か。ただそれで研究者やメディアが、どれだけ大きな声を挙げたとしても、結局どうするかって消費者であって。後ろめたくても食えば食うだけウナギは減るわけですよね。そのためにも、消費者には賢くなってもらいたい。ビジネスでされている方にとって「売れるから売る」というスタンスは、しょうがないと思うんです。でも消費者には現状を知ってほしい。
そのうえで、テレビという媒体を通した発信の大切さを実感しています。消費者って耳の痛いことは聞きたくないから、テレビ局側もあまり、こうした苦言を放送しない。インタビューで資源について話したとしても、オンエアでは、今年は安いかどうかという部分だけでほかはカットされていたりする。活字メディアは取材で話したことをある程度書いてくれるけど、もともとアンテナを張っている人にしか情報が届かない可能性もある。
だから、これからも調査を続けながら、できるだけテレビなど多くの消費者に届く媒体で、耳の痛いことも含めて、限られた水産資源の食べ方を一緒に考えてもらえるように発信を続けたいと思います。ウナギの問題を解決することができれば、ほかのいろいろな問題の解決にもつながるような気がするんです。
さて、今年の蒲焼き商戦に異変はあるのか。吉永准教授によるDNA調査結果も含めた内容は、月刊Wedge8月号の特集「ウナギ密漁」に掲載しています。7月18日より、こちらの書店や駅売店にてお買い求めいただけます。
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