2022年7月2日(土)

Wedge REPORT

2015年7月17日

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Q:検査を始めたきっかけは?

――いま思えば本当にたまたまですね。2011年の東日本大震災で、当時、海洋生命科学部があった岩手県・三陸キャンパスが被災して、冷凍していた研究サンプルがすべて駄目になってしまった。約1カ月後に神奈川県・相模原キャンパスに緊急移転した後も、割り当てられた仮設の研究スペースはわずか机2個分で。10人ほどいた研究室の学生からは、学部が今後どうなるのかといった不安や、新4年生からは「もう自分たちは卒論なんてできない」といった雰囲気が漂っていました。そんな彼らを見ていて、こんな状況だけど、しっかりと卒論研究をさせたい、相模原キャンパスの近くに海はないけど、スーパーはたくさんあるのだから、市販の海産物商品を使ったDNA検査をさせようと思い、始めたのが、きっかけでした。

吉永准教授の指導を受けながら蒲焼きのDNA検査を行う研究室員(撮影:編集部)


Q:検査を始めた初年度に中国産蒲焼きからヨーロッパウナギを検出。ヨーロッパウナギといえば09年にはレッドリストで絶滅危惧種に指定され、輸出規制も始まっていた品種ですね。検査結果を見たときの感想は?

――ああ、けっこうまだ出回ってるんだと。実際にやってみてわかるのは面白いもんだなあと思った程度でした。蒸したり焼いたりといった蒲焼きの工程をへても遺伝子解析でウナギのDNAが判明することは、すでにほかの大学が発表していた手法だったので、取り立てて目新しいことをやっているという気持ちもありませんでした。そのため初年度は、水産加工商品全般で検査を行いました。

 検査で判明したDNA結果は、東大時代の恩師である塚本勝巳教授(現・日本大学教授)をはじめとするウナギ研究者との飲み会の席でネタとして話したり、大学の講義で学生たちに伝えたりする程度でした。学生たちに対して検査結果を伝えようと思ったのは、有名なスーパーの商品でもこういった結果が出ているという事実を通して、世の中を疑う力を学生につけさせたいという思いからでした。

 2012年に引き続き検査を行ったのも、蒲焼きのDNA検査が、研究室に入ってくる新4年生に、標本の扱い方や研究ノートのつけ方、失敗しない検査方法など、研究の基礎を教えるのに最適だったことが主な理由でした。
 

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