Q:石炭火力の新規計画について望月義夫環境大臣が「ノー」を突きつけたが
A:原発の停止以降、全国に小規模の石炭火力発電がどんどん作られようとしている。最新技術を使った石炭火力への投資ならCO2排出量が少ないから良いが、一般の人が電力自由化を当て込んで作ろうとしている石炭火力はCO2を増やすことになる。私には個別事例の評価はできないが、全体論として環境大臣の指摘はもっともだと思う。
Q:政府は30年度の温暖化ガス排出量を13年比で26%削減する目標を決定し、今年の12月にパリで開かれる国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)に提出するが
A:26%という数字は、省エネ期待によるものが大きいが、この数字は1次エネルギーでみた場合で、電力でみると35%の削減になる。これは国際的にみても恥ずかしい数字ではない。これまで日本はCOPなどの国際会議の場でも「まず削減率の数字ありき」で目標を出してきたが、同じ過ちを繰り返してはならない。民主党政権下の2009年、鳩山由紀夫元首相は「2020年までに温暖化ガス排出量を1990年比で25%削減」という国際的な公約を掲げた。東日本大震災の前で原発の拡大というカードが残されており、政府は原発比率を50%とするエネルギー基本計画を打ち出したが、今やこの前提は非現実的なものとなった。今回は年末のCOP会議の前に数字を積み上げたことを踏まえて温暖化ガスの削減目標が出せたのはよかった。
年末の会議もこれまでのCOP議論と同じように、悪いのはこれまで成長のために温暖化ガスを排出してきた先進国だから、先進国は途上国に対して環境対策に必要なカネを出せということになるのではないか。国際会議ではCO2削減目標などをめぐって先進国と途上国の間でもめるので、先進国と途上国は断ち切って議論すべきだ。途上国とは、先進国との2国間で排出量の削減を相互にオフセットできるCDM(クリーン開発メカニズム)スキームをより効果的に見直しを進めることで世界のCO2削減ができる。
コマツが2009年にインドネシアの代理店と石炭鉱山のお客と、鉱山の埋め戻しをした跡地にジャトロファを植林し、それを原料にバイオディーゼルを使えるプロジェクトを立ち上げた。鉱山で稼働する100台のダンプにバイオディーゼルを使用しCO2を減らすことが目的だが、これをCDMで認めてくれるように国連に申請しようとしたところ「今回のスキームが経済的に合うというのであれば、通常の営業活動で行えばよい」と言われた。国連の言い分は「経済的に持ち出しになるようなスキームなら、CDMとして認める」というもので、あきらめざるを得なかった。日本の環境技術を使って世界のCO2が削減でき、さらに経済的にも合うのであれば良いこと尽くめではないかと思うのだが、国連の言い分は「経済的に持ち出しになるようなスキームでなければCDMとして認められない」というおかしな理屈だ。仮に、このようなスキームが認められなくても、日本の技術を使って2国間同士でやればいいと、経団連を通じて主張してきた。日本はインドネシアなど既に十数カ国と2国間クレジット制度に関する二国間文書に署名している。日本こそそういった世界のCO2を削減する具体的活動に重点を置くべきである。
Q:削減排出量を比較する際の基準となる年を何時にするかによって変わってくるが
(出所)資源エネルギー庁
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A:基準年の話の前に、日本は欧州連合(EU)と競うようにして削減目標を決めてきたが、これも繰り返してはならない。大小様々な経済規模の28カ国からなるEUと日本1国が同じ土俵で議論するのは間違っている。ベンチマークは国とすべきだ。
基準年については、EUは東西ドイツの統合があった1990年で比較すると有利だから、いまだに90年比較を持ち出したがる。京都議定書の第一約束期間が2012年に終わって13年からは第二期間に入ったのだから、これからは直近の実績データをもとに、13年をベースに削減目標をつくるべきだろう。13年は大震災後で日本の排出量が多くなった時だから、これを発射台(比較年次)にすると日本にとっては有利になる。だが、これは日本が削減数字をごまかそうとしているのではない。GDP当たりや、1人当たりのCO2排出量の少なさでは、原発中心のフランスは別格として、日本のレベルは米国よりは圧倒的に優れており、同じく世界最高水準にあるドイツにも決して劣ってはいないのだから、堂々としていればよい。日本の交渉団には国際会議の舞台でほかの国をギャフンと言わせるくらいの説得力をもって交渉してほしい。
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