定年バックパッカー海外放浪記

2015年11月8日

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高野凌 (たかの りょう)

定年バックパッカー

1953年、横浜生まれ。神奈川県出身。大学卒業後は商社、メーカー勤務を経て2013年定年退職。2014年春から海外放浪生活を始める。放浪歴は地中海、韓国、インドシナ半島、インドネシア、サンチアゴ巡礼など。サラリーマン時代は主として海外業務に従事。ニューヨーク、テヘラン、北京にて海外駐在を経験。身長170センチ、57キロ。獅子座。A型。現在2人のご子息は独立し、夫人との2人暮らし。孫1人。

 華僑の話をしていたら、男子は米国政府のプログラムで雲南省の地方都市で3年間中高生に英語を教えていたとのこと。ここから彼の現代中国論が始まった。私も北京駐在経験を交えて応戦:

 「中国社会では自由が制限されている。政治的には自由がないし、表現の自由も制限されており人権そのものが犯されている」

 「欧米の基準で判断するのはおかしい。表現の自由よりも三度の食事を保証することを優先する政治が悪いとは思わない」

 「中国における大都市と地方の所得格差は深刻だ。それは益々拡大して社会不安を増大させ内部分裂を引き起こす。農民工(農村から大都市への出稼ぎ者)の実態は悲惨だ」

 「確かに格差は大きく農民工も苦労しているのは承知している。しかし鄧小平の先富論は正しい。農民が豊かな大都市に出稼ぎすることで地方経済へもプラスの効果がある。それに中国国内の所得格差はマイナス面だけでなくプラス面があることを理解してほしい。すなわち、都市に地方の労働者が安価に提供されることで不足しがちな都市の労働力をおぎない、かつ製造業などの賃金コストを安定させるというメリットだ。経済格差が中国経済成長のエンジンだと思う。日本の経済成長の過程でも都市と農村の経済格差が都市への人口移動をもたらし経済成長の要因となった」

 「しかし農民工の劣悪な労働環境は放置できない問題だ。それを軽視して経済成長の成果だけにスポットライトを当てるのは危うい」

 「それでも地方でわずかな現金収入で暮らす生活のほうが苦しく希望がないことを理解するべき。北京や広州では辺境から都市に来た母子が乞食をしているケースを沢山見た。しかし、地方の辺境でわずかな土地にすがって水も電気もない自給自足の生活をするより大都市で乞食をするほうが生活は楽になるので大都市に来るのだと中国の友人は言っていた。乞食のほうが現金収入は多く、たまには小遣い稼ぎの仕事もあるのだと」

 米国男子との議論に熱中していたら、乗船案内のアナウンスがあり議論はストップ。同じ時期に中国に数年暮らしても現代中国への評価は180度も違う。彼は欧米伝統のヒューマニズムの視点から、私はマクロ経済の視点から現代中国を見てきたのだろう。議論は平行線のままだが清々しい気分であった。

 このように立場や背景など全く異質な未知の人と議論ができることがバックパッカー旅の醍醐味だ。お互いに自由で対等な立場で意見交換して知識を広げられ、しかもお金がかからない。

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