2022年9月26日(月)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2015年9月24日

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中島厚志 (なかじま・あつし)

新潟県立大学国際経済学部 教授

東京大学法学部卒。日本興業銀行入行。パリ興銀社長、みずほ総合研究所調査本部長、経済産業研究所理事長などを経て2020年4月から現職。主な著書に『大過剰 ヒト・モノ・カネ・エネルギーが世界を飲み込む』(日本経済新聞出版社)。
 

アメリカ経済一人勝ちで
日本が受益国となる可能性

 今回の世界的市場混乱の原因を主として中国の経済金融動向や政策対応に求めても、不十分な答えしか出てこない。むしろ、今回の事態では、景気減速とは言ってもなお成長力がある中国経済でさえ追随しきれないほどドルの短期間での上昇ぶりが突出していると見なければならない。

 しかも、アメリカ経済の一人勝ちとドル高は当面続く可能性が高い。雇用改善に伴って、アメリカの可処分所得は底堅く増加しており、経済成長の原動力をなす個人消費は力強い(図表6)。利上げも秒読み段階で、量的緩和政策を続ける日欧や金融緩和方向に動く中国を始め多くの新興国とは逆の動きとなっており、他の通貨との金利差拡大からもドル高を支えていく。

【図表6】米国:可処分所得と個人消費支出の推移
(注)前年同月比
(出所)米BEA
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 今後ともドル高が続くことは、2000年以降の新興国ブームの見直しにつながり、新興国に流れてきた巨額の資金がアメリカ等先進国に逆流するリスクを拡大させる。FRBが利上げをしてドルやアメリカ経済の求心力が高まれば尚更であり、調整局面では新興国経済や国際金融市場で混乱が続く可能性もある。

 もっとも、アメリカ経済一人勝ちとドル高は、世界経済にとって悪いことではない。振り返ってみれば、アメリカが戦後最長の好景気を享受した90年代がITバブル崩壊で終焉した後、新興国隆盛と資源高の時代が始まった。

 今、BRICS等新興国の景気減速と資源価格低迷で、ふたたびアメリカ経済中心の時代が巡ってきた可能性がある。その上で、かつての世界経済は、アメリカ経済に支えられて堅調な成長を享受していた。

 足元の市場の混乱は、21世紀に入ってからの新興国隆盛と資源高が名実ともに変化し、この変化が証券市場や国際金融市場に荒っぽく一気に織り込まれる動きの一環とも位置づけられる。そして、当面の新興国経済や国際金融市場の変調も、新たな状態への移行が一段落すれば収まることになる。

 今後は、新たな世界観の下で世界経済と市場の動きを見ていく必要があろう。世界経済の成長は、新興国の成長が鈍化する分低位となるが、アメリカ経済の成長と資源価格安で底堅さが見込まれる。くわえて、新興国隆盛の図式が変化するとしても、中国経済はこの間大きくなっており、今後も世界経済の成長を支えることになる。

 新たな世界経済の成長パターンが定着するとき、恩恵を受けるのは対米貿易を伸ばす国であり、非資源国である。そして、対米貿易量が大きく非資源国である日本は、最大の受益国の一つとなる可能性がある。TPPが成立すれば尚更である。アメリカ経済中心の時代到来は、日本経済復活の時代到来と同義かもしれない。

  
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