2024年12月7日(土)

WEDGE REPORT

2015年9月9日

 6月に急落した上海株式市場は、中国政府の露骨ともいえる「救市」(市場介入)にもかかわらず続落を続け、ついに8月下旬、「世界同時株安」をもたらすこととなった。日経平均株価が一時、937円も急落し、ニューヨークのダウ平均株価も一時、過去最大の1089ドルの値下がり幅を記録した8月24日は「ブラックマンデー」とすら呼ばれている。

 中国経済にいったい何が起きているのか。重要なのは、株価下落そのものより、それをもたらす原因となったマクロ経済状況の変化である。現在中国が陥っているのは「デット・デフレーション」である(これは日本がバブル崩壊後に陥った「デフレ・スパイラル」とほぼ同義)。

画像:iStock

日本の高度経済成長期も超える過剰投資

 中国では株式市場の高騰が昨年から続いてきた。だが、実体経済の指標とは全く連動しておらず、株高は不動産市場から流入した資金によって一時的に実現したものに過ぎない、というのが大方の見方だった。

 2008年のリーマンショックによる世界金融危機以降、中国は地方政府による公共事業を中心とした投資をもって潜在的な消費不足を補ってきた。13年の公式統計によれば、GDPのうち国内投資(在庫投資含む)が占める比率(粗投資率)は47・8%に達している。日本の高度経済成長期でも粗投資率は35%程度だったことを考えると、この中国全体の数字だけでも投資が過剰な状態にあることは明らかだ。

 しかしより深刻なのは、特に内陸部における投資依存度の高さである。例えば同じく13年に粗投資率が80%を超えている省・自治区は、全国で雲南、青海、チベット、内蒙古、寧夏、新疆の6つもある。このうちチベットと青海は投資率が100%を超えている。これは、投資の大部分が中央からの補助金で外の省から資本を購入することに充てられているためである。

 これらの国内投資の多くはもともとフローの投資収益率は低く、キャピタルゲインが発生することを前提に行われてきた。しかし、14年の中ごろから全国の不動産市場が下落に転じ、資産価値の期待上昇率がしぼむことにより、それらは収益性が低いだけではなく、キャピタルロスをもたらす可能性の高い「無駄な投資」となってしまった。まさにデット・デフレーションが視野に入る状態となっていた。


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