WEDGE REPORT

2015年10月29日

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後手に回ったオバマ

 次々に新しい手を繰り出してくるプーチン氏に対し、米国のオバマ大統領は後手に回る一方だ。米国は昨年夏から対IS空爆に踏み切ったが、「弱体化させ、壊滅する」という目標は全く達成できず、空爆作戦は機能していない。これに苛立ちを深めているのが大統領の任期が1年3ヶ月を切ったオバマ氏だ。

 オバマ氏は10月初旬、膠着状況に陥っているイラクとシリアの対IS戦争について、戦況を変える提案を早急に作成するよう国防総省に要求した。これを受け、国防総省が作成した案は(1)シリアへの限定的な特殊部隊の投入(2)イラク駐留の軍事顧問団がイラク政府軍とともに前線に展開、というものだ。

 シリアに「飛行禁止空域」を設定するという案は、膨大な人員と戦費がかかるため大統領に提案する前に、カーター国防長官、ケリー国務長官らによって除外された。シリアの戦場へ特殊部隊が配備されるのは、人質救出やIS急襲作戦など緊急のケースを除けば、初めてのことだ。投入されるのは「デルタ・フォース」 と見られるが、反体制穏健派とクルド人武装組織「人民防衛隊」(YPG)ともに作戦行動し、助言などを行う見通し。

 またイラクの前線に米顧問団が配備されるのも初めてだ。イラクには3500人の顧問団がいるが、これまでは後方から作戦の立案、助言を行ってきた。米顧問団は当面、イラク西部アンバル州の州都ラマディの奪回作戦でイラク軍とともに行動する見通しだ。

 「デルタ・フォース」は2003年から2011年までの米軍のイラク駐留で、ISの前身のアルカイダ系過激派の掃討作戦に従事した。ISが昨年、シリアか らイラクに侵攻、北部のモスルなどを占領した後に急きょ、イラクに戻され、北部クルド人地域のアルビルに駐屯地を構えた。

 今年5月には、シリア東部でISの幹部に対する急襲作戦を行って情報入手で大きな成果を挙げた。10月22日には、クルド人部隊との共同作戦で、イラク北部にあったISの捕虜収容所を襲い、処刑寸前だったクルド人ら69人を解放した。しかしこの際、デルタ・フォースの1人が死亡、2011年の米軍撤退以降、初めての米兵戦死者も出している。

 今回の案はオバマ氏が今週中にも承認する見通しだが、対IS戦争で米国が地上戦に参加するという大きな一歩を踏み出すことになる。またシリアでは米ロの特殊部隊がそれぞれ敵対する反体制派、アサド政権軍とともに作戦行動することになり、両部隊が前線で衝突することにもなりかねない。

〔修正履歴〕記事中に「ザルソン部隊」という記述がございましたが、正しくは「ザスローン部隊」でした。訂正してお詫び申し上げます。(10月30日、編集部)

  
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