2024年11月22日(金)

サムライ弁護士の一刀両断

2015年11月11日

民事責任は?

 では、民事責任はどうでしょうか。

 マンションの販売業者は、マンションの売買契約の売主にあたります。そして、売買契約の売主は民法上、買主に対して、瑕疵担保責任を負います。

 すなわち、売買の目的物に「隠れた瑕疵(かし)」(注意しても通常は気付かないような欠陥のこと)が存在し、それにより契約をした目的を達することができないような場合、買主は売主に対して売買契約を解除し、または損害賠償を請求することができます。

 瑕疵担保責任は、売主が、瑕疵があることを知っていたかどうかに関係なく認められます。工事の不備が「隠れた瑕疵」にあたり、マンションの傾きにより、マンションを購入した目的を達成できないと判断されるような場合、販売業者が、不備があることをまったく知らずに販売したような場合であっても、販売業者は買主に対して契約の解除や損害賠償の責任を負います。

 次に、建設業者に対してどうでしょうか。

 建設業者は、マンションの買主と直接の契約関係にあるわけではないので、買主が建設業者に対して契約上の責任を追及することは原則としてできません。

 もっとも、建物の瑕疵が、建設業者が違法な工事を行ったことで生じた者である場合、マンションの購入者は建設業者に対し、建物の瑕疵によって生じた損害について不法行為責任を追及する余地があります。建築のための重要なデータを改ざんすることは、一般的には違法・不当な行為だとされる可能性が高いでしょう。そして、データの改ざんが理由で欠陥が生じ、損害が発生したのであれば、建設業者に対して不法行為責任としての損害賠償を請求することが考えられます。

 なお、今回の件では、マンションの販売業者が、住民らに対して建て直しや買取を含む補償案を提示しています。

 仮に、販売業者が買主に対する補償金を支払った場合、販売業者は建設業者側に対して、買主に対して支払った金額などを求償請求することが考えられます。


新着記事

»もっと見る