7時頃に国道に近い比較的大きくきれいな食堂があったので店員にテント設営の件を相談。女将さんが出てきて「夜9時以降に設営して朝6時前に出発するならOKですよ」と了解。安堵して早速店内に入り名物という“鶏カルビ”とビールを注文。これは浅い鍋に鶏肉と野菜を入れて味噌味で炒めて食べるもので、最後は残った肉野菜にご飯を入れて焼き飯にして〆にするという料理というような説明。仲居さんがテーブルで鶏肉野菜を炒めてくれる。半分くらい食べてビールを飲んで一息ついた。
ふと周りを見ると店はかなり繁盛しており、隣では10人くらいの中年男女のグループが賑やかに宴会をやっている。6人の男性は全員自転車のユニフォームを着ている。聞くと地元の小学校の同級生で今年50歳。男性たちはサイクリングチームをつくっており今日は近郊をサイクリング。女性たちも近所に住んでおり二か月に一回くらいクラス会をやっているとのこと。小さな町の幼馴染ということで気心の知れた仲間内の宴会だからか傍から見ていても和やかで楽しそうである。
日本から来て自転車旅行をしていると自己紹介すると歓声が沸いた。握手攻めである。そのあとはビールやマッコリ酒で乾杯攻めである。ここは民間草の根レベルでの日韓親善交流を促進しなければいけないと片言のハングルを駆使して交流を図る。根がおっちょこちょいなのか昼間の山中強行軍の反動であろうか、はしゃぎまわり宴会を盛り上げる。 おばさんのスマホでツーショットしたりオジサンとハグしたりと飛び回る。最後は全員で記念撮影である。
小生がやっと自席に戻り〆の焼き飯を仲居さんに作ってもらっていると「貴方はお客さんです。ゆっくりと沢山召し上がって楽しんでいってください」というような意味のことを言ってマッコリ酒の瓶を私のテーブルに置いて彼らは上機嫌で引き上げていった。
まったりしたマッコリ酒を味わい、〆に焼き飯を食べると心身ともに満たされ昼間の疲れが吹っ飛んでしまった。時間を見るとそろそろ9時なのでテント設営を始めようかと女将さんに「お勘定お願いします(ケサンへジュセヨ)」と声をかけると「お勘定は済んでいます」と。何かの間違いではないかと思い聞き直すと「先ほどのお客様が払って行かれました」というような趣旨の説明であった。
振り返って考えてみると「貴方はお客様です」というフレーズは“ここは私たちが勘定を持ちます”という意味であったのだ。しまった!私は気づかずにお礼も言っていなかった。想像を超えるコリアン・ホスピタリティーに圧倒された。