世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年12月3日

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 米国は、大規模地上作戦を念頭に置いておくべきである。プーチンのバルト諸国侵攻、朝鮮での紛争、インド・パキスタン紛争やシリアでの和平執行など、色々なケースがある。

 抑止が働けばいいが、そうでない場合もある。米国の参加が必要とされることがありうる。米陸軍は大きくなる必要はないが、これ以上削減されるべきではない。オバマ大統領が中東での泥沼を避けようとすることと、軍をありうる任務のために準備しておくことは別の事柄である。防衛計画立案に際し、古いボルシェビキの言ったこと「あなた方は戦争に興味はないかも知れない。しかし戦争が君たちに興味があるのだ」、を思い起こすべきである、と述べています。

出 典:Michael O’Hanlon‘Obama’s Military Policy: Down-Size While Threats Rise’(Wall Street Journal, October 28, 2015)
http://www.wsj.com/articles/obamas-military-policy-down-size-while-threats-rise-1446073142

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今後も「大規模で長期の安定化作戦」実施はあり得る

 上記オハンロンの論説は、良い論説です。

 オハンロンは、陸軍重視の考え方をしています。それで、この意見を海陸空軍間の主導権争いの一環と見る人もいるでしょうが、そう片付けるのは適当ではありません。「大規模で長期の安定化作戦」は今後しない、したがって陸軍の規模は縮小されるべしと言うオバマ政権の政策は、羹に懲りてなますを吹く類で、感心しません。

 今後もかなりの兵員投入が必要となる事態は考えられます。今後の脅威の見通しについての判断と必要兵力の問題は慎重に検討すべきです。中東の泥沼に懲りて、もう「大規模な長期の安定化作戦」はしないから、そのための準備もしないで済むということにはなりません。

 オハンロンがこの論説で引用しているボルシェビキの発言は、トロツキーがブレストリトフスクでのドイツとの講和交渉に行った後に言った言葉です。

 戦争がどういうものになるか、戦争になるか否かはこちらの都合だけで決められるものではありません。もう大規模地上戦はないなどと決めても、相手がそれを仕掛けてくれば、対応せざるを得ません。宮沢元総理は良く「君たち、戦争だけはするな」と言っていましたが、戦争になるか否かは一方的に日本が決められるものではありません。戦争の態様もこちらが一方的に選択しうるものではないのです。

 ただ今日、陸軍の戦闘能力は、兵員数よりも装備の質量に依存する面が大きいので、兵力数をさほど重視することはないとは言えます。米陸軍はいまでも中国、北朝鮮、インドより小さいなどのオハンロンの議論は適切ではないかもしれません。それでも一定の兵力数は維持しておくべきだと思います。
  
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