Q 電通は世界ランキングでどの位置にあるのか
A 世界の広告業界をみると、デジタルにマス媒体やプロモーション、クリエイティブなどを加えた総合的なグループ連結の収益では、英国に本拠地を置くWPPが首位、2位が米国のオムニコム(OMC)、3位がフランスのピュブリシス(PUB)、4位が米国のインターパブリック(IPG)、6位がフランスのアバス(HAV)で、電通は5位だ。しかし、メディアの広告枠を確保するメディアエージェンシーとしての収益では、電通は2014年の取扱高でWPP、オムニコムに次いで3位にあり、すでにメディアトップ3になっている。
伝統的なメディアを活用した広告ビジネスではWPPは電通の3倍くらいの規模があり、ここで追いつこうとはまったく思っていない。しかし、着実に進展するデジタルシフトへの流れの中で、電通グループとしてライバルとの競争に負けるわけにはいかない。また、単に規模を追い求めるのではなく、あくまでもクライアントに満足してもらえるためのサービス体制を整備していく必要があると考えている。
Q 海外事業の統括会社(DAN)と本社との意思疎通はできているか
A 一定金額までの海外M&AはロンドンにあるDANに権限移譲している。DANでは電通のアンドレー専務が取締役会議長を務めており、同社のCEOやCFOなどで構成するM&A委員会で様々な投資案件を決めている。私もそのメンバーの一人だ。ある一定レベルまでのM&Aについてはこの委員会で判断を行っているが、それを超える案件は本社の役員会の承認を得て決めている。これまでのところ、DANで決めたM&Aに本社がノーと言ったことはない。基本的にDANと本社の買収に関する目線は合っている。毎年、年頭に本社とDANの間でその年のM&A戦略を確認しているので、大きなずれは起こらない。DANの幹部や被買収企業の幹部がほとんど辞めずに電通グループにとどまってくれていることは、そうした戦略面での相互理解が図れているからだと思う。
Q イージスを買ったことによるシナジー効果は出ているか
A 海外市場での日本のクライアントに対するサービスがエリア的にも内容的にも格段に広がった。イージスにとっても日本国内のサービスを電通が実施してくれるということで、新しい顧客の獲得につながり、従来にはなかった顧客との取引が増えてきている。
Q 企業買収する際の基本戦略は
A 毎年、買収金額を決めて企業買収をしているわけではない。3つの戦略に基づいて買収をしている。1つは「インフィル」と表現しているが、クライアントが求めるサービス機能を満たせる会社、2つめは地域や国を広げられる「スケール」、3つめはデータやテクノロジーで広告コミュニケーションの高度化を実現する「イノベーション」だ。主な領域はデジタルで、昨年度実施したM&Aの半分はデジタル系のエージェンシーとなっている。